札幌そば研究センター

2016年1月30日土曜日

そばとわたし(7) いっきかすい てはグローブ (そば打ち語録)

いっきかすい てはグローブ

札幌新川そばの会では、生粉打ちでそばを打ちます。そば粉と水でそばを打ちます。生粉打ちでお湯を用いることもありますが、お湯も使わず水で打ちます。

この日も、美味しい蕎麦のために、そば粉を篩い終え、1回目の加水で250mlを加えました。
 

 会長曰く、
  「なぜ、水を半分しか入れないの?」
 という問いです。
 
 私は、
  「なぜと言われても、そうするようにと教えてもらいましたが?」
 と答えました。
 
 会長は、
  「一気に水を加えたほうが、混ざりやすいけど」
  「やってごらん!」
 
 私は、
  「わかりました。」
 
 と答えます。


1kgのそば粉に対して、500mlの水を用意していましたので、8割がた一気に水を加えました。そして、水回し開始です。

指先から、手の内側に水が付き、そば粉もくっ付いて、指先はそば粉のダマで膨れています。江戸流の教えでは、1回目の加水は目星の加水量の半分程度を加えるとなっていました。そして、水回しでは手に水が付かないように、ましてや手のひらに水とそば粉が付かないようにということでした。今の私の手はどうかというと、指先が粉だらけで、かろうじて手のひらはまだきれいです。指先のそばを取ろうと躍起になっています。一度にあんなにたくさんの水を加えれば、指先に水とそば粉が付いてどうしようもなくなるということが分かりました。


 会長曰く、
  「指先にそんなに付くのは、あなたが悪い。」

  「手に付かないように、混ぜないと。」

  「一気加水の方が、粉と水が混ざりやすいので、一気に水を加えなさい。」


 私は、
 「うまくいかないですね」

「またやってみます。」

 と、結構素直に答えました。


しかし、水をたくさん加えて、手に付かないようにするにはどうするのか、一気加水が本当に水と粉が混ざりやすくなるのかという二つの点に、十分な理解はしていませんでした。私の指先は、そば粉で小さなグローブをしているようです。

ここでは、そば粉に水を加えて均一に混合する際に、水を少しずつ加えたほうが良いのか、一気に加えたほうが混合しやすいのかという問いについて考えて見ます。

一茶庵の片倉康雄さんは、一気加水を薦めています。水の加え方と所要時間について、一気に水を加え、1分で混ぜろと言います(1988 片倉康雄)。一茶庵のそば教室では、今でも一気加水でのそば打ちを教えているという情報(一茶庵手打ち蕎麦プロ教室・蕎麦打ち)がWebにあります。

ではなぜ一気加水が良いのかという知見を探してみると、「そば打ちを科学する」というテーマで、2つの報告に行きつきます。

一つは、第5回千葉県そば大学講座講演資料での発表資料(2009 熊田鴻)です。そば粉に水を混ぜることで、水がそば粉の澱粉を湿式粉砕していることを示しています。ここでは、そば粉への加水を一気に行う、多段階で行う、連続多段階で行う際の粉と水の混ざり方を比較検討したとあります。三つの加水方法での長所と短所が記載されていますが、その裏付けとなるデータの掲載は見当たりません。よって、これを以って一気加水が良いとはいえません。

二つ目の情報は、TOKYO蕎麦塾そば打ち教室での昭和産業(株)食品開発センター第一開発グループの清水吉さんの資料(そば打ちの技を科学する)がWebに掲載されています。一報目と同様に、加水による澱粉粒の湿式粉砕に関する顕微鏡図は掲載されています。ここでは、『加水はなるべく一度に一気に加水すること。そば粉の澱粉組成の塊を組成微粒子に分解するためには、水を粉全体に早く分散させなければならない。(引用文)』と記載されています。そば粉の澱粉組成の分解と水回しとの関係を示しています。しかし、その裏付けとなる電子顕微鏡図で、一気に加水した場合と、そうでない場合の比較検討結果は掲載されていないので確認できません。また、論文への投稿は無いようです。

このように、一気加水がよいという理由を科学的に証明した論文やその裏付けデータを明確に提示しているものは存在していないようです。どなたか、ご存知でしたらご教授いただけると幸いです。

堀金 彰(2004)は、十割そばにおける水回し工程の解析を行い、十割のそば粉と水との混合は、3分で終了していることを、水回しによる加水の浸透と、MRI測定と物性測定で証明しています。生粉打ちの水回しは3分で終了して、それ以降は加水の浸透と物性に変化が生じないということは、一気に水を加えなければ、水と粉は均一に混ざり合わないかもしれないということを示しています。3分でそば粉と水の混合が終了するのであれば、最初の加水でほとんどそば粉と水の混合は終了しているので、その後いくらかき混ぜても意味が無いことを示します。このような状態で、少しずつ加水していくことになれば混ぜ合わさったものに、水を加えて、再度混ぜ合わせるのに時間を要するということを繰り返すことになり、大変非効率的な作業になります。そば粉にストレスをかけない(うつかんがえる参照)ことが美味しいそばに繋がるという前提に立つと、これは善ろしくありません。本論文が示す加水の浸透とMRIと物性測定の経時的変化は大変興味深い内容です。

ここで、最初に触れた片倉康雄氏の経験に基づく記述を再検証してみます。ここでは次のように述べられています。


<引用>
加水を何度かに分けるのは、どうしてよくないのか。
 それは、粉のひとつぶひとつぶに、平均に水がまわらないからよくないのである。水を余分に含んだところができる一方で、水のまわりの充分でないところもできてしまう。そればかりか、小さな塊をつぶしてみると、最後まで粉のままのところが残っている場合も少なくない。
 何度かに分けて水を加えるとなれば(足し水の場合も同じことだが)、初回に加える水は必要量に充たない。粉の量に対して、水の量が絶対的に不足している。粉のひとつぶひとつぶにまで水が充分に行き渡らぬのは、考えてみれば当然のなりゆきである。
 それにまた、かきまわす作業がなにがしかは進んでいるので、すでに水を吸った粉、まだ水を吸っていない粉が、複雑微妙に入り混じっている.じつは、これが問題なのである。そういうところに再度、水を加えたら、何が起こるか。
 木鉢の中の粉は、再加水を必要とする箇所だけに限って足し水できる状態にはない。複雑微妙に入り混じっている。そこに再加水する以上、足し水は、水の足りないところに滲みこみもすれば、すでに充分に水を含んでいるところに、さらに余分な水が加わりたがることにもなる。つまりは水が平均せず、粉のひとつぶひとつぶにまんべんなく水分を含ませる、という水まわしのねらいから外れてしまう。

片倉康雄氏の経験に基づく記述は、堀金 彰(2004)によりその一部を証明されたことになります。

これらの知見を総合すると、一気加水は、少なくとも生粉打ちにおいては良いということです。片倉氏の言うように1分ではないかもしれませんが、現在の科学では3分で混ざり合っていることが確認されています。

そば粉と水の混合が3分で終了するということは、如何にこの時間を有効に使い、両者を混ぜ合わせるかが、水回しの神髄なのだと思われます。
3分は、カップヌードルが出来上がる時間で、ウルトラマンが地球で生きられる時間で、ボクシングの1ラウンドの時間です。長いようで短い、短いようで長い時間をどう使うのが善いかという疑問には、別の機会で検討することにします。


一気加水で私の手にはグローブのようなそば粉の塊が指先についています。きれいに落として粉をまとめて、ねりに入りました。この日の蕎麦は、切があまりうまくいかず、太いのと細いのが混在してました。でも、何故か自分の打ったそばはそれなりに美味しいのです。



(参考文献)
1988 片倉康雄 手打そばの技術―一茶庵・友蕎子    旭屋出版
一茶庵手打ち蕎麦プロ教室・蕎麦打ち(2016121日確認http://www.pdsys.jp/soba/itsa-an-sobauchi.htm
2009     熊田鴻   蕎麦打ちを科学する 第5回千葉県そば大学講座講演資料 発表資料         http://homepage3.nifty.com/kumatako/sobakagaku-siryousitu/sobautiwokagakusuru.pdf
2015     清水吉郎 そば打ちの技を科学する      TOKYO蕎麦塾そば打ち教室 昭和産業(株)食品開発センター 第一開発グループ         "http://homepage3.nifty.com/kumatako/tokyo-sobajyuku/sobautikai050612/waza-kagaku.html

2004     堀金 彰 他       そば切りの水回し工程の解析 Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi Vol. 51, No. 7, 346351

札幌新川そばの会 2016年 新年会

2016年1月30日 札幌新川そばの会の新年会でした。

別途報告のように、本日そばの会が開催され、午後から新年会です。
新年会も、納会同様に一品持ち寄りパーティー??でした。

毎回ですが、皆さんの料理の腕が光る一品が揃います。私はイタリアン春巻の提供です。
12時頃から1次会開催、途中で中締めがあり、夕方6時頃に自宅に戻りました。結構長かったのか??な!

昨年後半から教室への参加者も増え、新年会参加者も昨年より多く成りました。これは、活気があって本当に良いです。色々な方が居られるので、話しも尽きず昨年より明らかに長い会になりました。それでも、最後は名残惜しそうです。このような時でないと、なかなかゆっくり話を聞くことができませんので、余計に話しが盛り上がるのだと思います。色々な話しの合間と最後はそばの話になるのが自然の流れです。生粉打ちと二八の話し、全麺協の話、段位の話し、蕎麦店の話し、そば打ちの手法の話になると目がギンギンです。

皆さん、本当にそばが好きなのだと思います。特に、美味しいそばを求めている方が多いのが、札幌新川そばの会のメンバーです。

そうでした、一つ報告があります。
3月に長万部でそばの大会があります。そこで、「団体戦に出る!!」と言うことに、本日の新年会on飲み会の席で、急遽決まったようです。飲んだ勢いと思ったら、その場で参加表を書いたので本気です。練習必要です。出るからには勝たなければ。

急に気合が入った。  今年もよろしくお願いいたします。



そば打ち記録(34) 札幌新川そばの会 

2016年1月30日

天候:曇り
気温:マイナス3℃

今日は2回目の札幌新川そばの会でのそば打ちでした。本来は開催されない予定でしたが、大勢の初心者が参加されるかも?ということで、お手伝いの予定でしたが、参加者が思ったより多くなく、折角なので教室を開催しますということで、私たちは普段通りの札幌新川そばの会でした。

今日は、今週中標津からキタノマシュウを始めて入手できたので、これを是非打ってみようと思い、気合を入れてのそば打ちでした。対抗馬は、昨年末に入手した音威子府の加藤様のキタワセ種で、石臼挽きの25メッシュ篩のそば粉です。
25メッシュは、粗挽き子になります。キタノマシュウの方は、現時点で石臼挽きの速度、篩目等の情報を得られていないので、どんな粉か全くわかりません。見た目は、少し粗そうです。(近々に情報が入る予定です)
音威子府のキタワセは、加藤農場での有機栽培で、キタノマシュウは、若森アグリの有機栽培です。どちらも、自家製粉したものを入手しました。

<1回目>
そば粉:音威子府 加藤農場 有機栽培 25メッシュ篩
品種:キタワセ
製粉:2015年11月
重量:1kg
加水量(率):460ml(46%)

<2回目>
そば粉:中標津 若森アグリ産 有機栽培
品種:キタノマシュウ
製粉:今週
重量:1kg
加水量(率):550ml(55%)

どちらも、ほとんどゴミなしで打ちあがりました。
キタノマシュウは少し加水量が多かったという印象です。また、こねの段階そば粉のまとまりが少し遅かったように思います。
キタワセ25メッシュは、想像以上に粉質が良く、こねの段階でのまとまりがよく、テリがでるのが早かったです。粗挽き子のイメージではありません。大変打ちやすい粉です。

切り終えた段階では、キタノマシュウは少し切れやすい状態で、キタワセ種とは少し違います。種の違いなのか、製粉篩作業の差なのかは分かりません。
現時点では、ここまでの比較として、また、機会を見て違いを報告できればと思います。

上;音威子府産キタワセ25メッシュ篩
下;中標津産キタノマシュウ
キタノマシュウ


2016年1月28日木曜日

そば紀行(4) 古拙 (こせつ) 仙台市

宮城県仙台市内で十割そばでGoogle検索すると、古拙の他数件である。隣の山形県はそばの里ですが、仙台市内では美味しいそば屋が少ないという印象です。
古拙は、銀座の古拙で修業された方が仙台市に店を開いたのだそうです。
そば粉は全国からそばを仕入れ、自家石臼製粉で提供されています。仕入れたそばにより、そば粉を挽く速度調整や、篩の目を検討しているそうです。
今日は、常陸秋そばでした。60メッシュで篩ったそば粉を用いて打ったそうです。

もり蕎麦とかけ蕎麦の両方をいただきました。
もり蕎麦は、ひら打ち麺でした。0.6~0.8mm程度にのしたものを1.5mmから2mm巾で切っています。かけ蕎麦の麺は、1mmほどの麺です。







2016年1月24日日曜日

そばとわたし(6) うつこと かんがえること (そば打ち語録)

2016年1月24日  うつこと かんがえること


 今日は札幌新川そばの会への参戦、5回目です。2回目以降は、会長が親身になってそば打ちを教えて下さいっています。一番最初に教えていただいた、江戸流のそばを打つ手順にそって打つという作業を2回目以降は、行っていません。四つ出しをせずに、のしながら4角に成形するような、江戸流のそば打ちではなく、それぞれの作業で重要なことを教えて下さっています。
 そば粉を篩い、1回目の加水を行い、「パン粉状態」と言い聞かせながら、粉と水を分散させようとしている時でした。


突然、会長曰く、
「湿式粉砕って、知ってるか?」
と問われました。
 私の内語
   「きた ~~~~!!!」
    「湿式??」「粉砕??」
    「工学部卒ではないし、分かりません。」
 と驚きの声。
私の外語
  「いえ、知りません。」
  「湿式粉砕ってなんですか?」
会長曰く、
  「調べてみてよ。」
  「急がないので。」


今朝は、工学系の質問を貰い、また頭の中は右往左往です。
この質問が、その後のそばに関する勉強の始まりでした。まんまと、会長の術中にはまってしまったと、今になって思うわけです。私の中で、決して忘れることは無いだろう、「湿式粉砕」です。

 「湿式粉砕」というお題を頂戴し、まずはネットで調べました。湿式粉砕自体は、食品を扱う領域で良く聞く言葉のようで、粉をより細かくする方法の一つでした。玄米からGABAを造る方法や、玄米ミルクを作る際に、個体を最大限細かく粉砕する方法で、固形物を粉に磨り潰す工程で、乾燥状態ではなく、湿気があることで粉砕しやすくし、より細かく粉砕できるという手法です。
そばとの関連は、石臼でのそば粉造りに関わります。石臼によるそば粉の粉砕が湿式粉砕研究の基になっています。石臼挽きを応用して、より細かい物質へ粉砕するために湿式での粉砕が考えられたということです。具体例として筑波大学では、「改良型電動石臼を用いた湿式粉砕装置」が作られたとの報告がありました(2014 北村豊)。

うどん打ちの手順で、個体に液体を用いて混ぜるという手順を応用して、コンクリートミキサーを開発したのが、前田又兵衛という方です(1999 前田又兵衛他)。コンクリートミキサーは、以前は工事現場で良く見かけた、グルグル回る部分を有するトラックです。最近はコンクリートミキサー車が工事現場に現れ、コンクリートを流し込むという作業は少なくなりました。コンクリートの成形は、現場ではなく別の場所で行い、出来上がったものを現場に持ち込むためだと思います。コンクリートミキサーは日本人の開発したものだったのです。その基になったのは、うどんを打つ際の水と粉とを均一に混合する方法を、コンクリートの混合作業に応用したものでした。色々な個体を混ぜるために、液体を用いて、何でも均一に混ぜてしまう方法です。

そばの水回しは、そばの粉と水を均一に混ぜる作業です。これは、うどん打ちで小麦粉と水を混ぜ合わせる工程と同一です。そば粉と水を均一に混ぜることが、その後の作業に影響し、蕎麦のでき、最終的には蕎麦の味にまで影響します。そば打ちで、最も重要な作業は、水回しだというご意見の方が居られます(1999 大西利光他)。固体であるそば粉を、液体である水に均一に混ぜ合わせるには、どんな方法が良いのかということを考える際の理論として、湿式粉砕という考え方が重要になります。これは、うどん打ちからコンクリートミキサーが開発された経路と全く逆の経緯を考えるということです。そば粉と水をどのように加えて、混ぜるとより均一なそば粉の塊に成形できるかということを考えるために、湿式粉砕という方法を検討してみると言うことになります。

均一にそば粉と水を混ぜ合わせるには、コンクリートミキサーのように均一にかき混ぜるということです。均一にかき混ぜるには、混ざっていない部分をなくすと言うことに他なりません。そば粉のひと粒一粒が均一に動くように混ぜ合わせることが、必要条件であるという結論に至ります。

そのように理解できた途端に、先輩諸氏やWebでの名人による水回しの際の手の動きが理解できるようになりました。同じ水回しでも、最初に加水した際の指の立て方と手の動きと、2回目の加水後の手の使い方は異なることが分かってきました。

そばを打つという作業は、結構科学的に理解していくことができるのだ、と思った瞬間でした。この事件が私に、そば打ちの手順や技法には、理由があり、その理由は科学的に論じられそうだというところが面白いと感じさせました。会長の問いは、いつも突然で面喰いますが、面白く、何かを考えさせて下さることが多いようです。

そばを打つということの、それぞれの作業の意味合いを考える時、しっかりと裏付けとなる理論が存在するのではないかと思います。そのような視点でそば打ちを考えることは、大変興味深いと考えています。再現性のある言葉で、表現できるようになると、一層面白くなると思います。「そばとわたし」は、そば打ちを科学するという視点で捉えて記述していければと思っていますが、私の理解の範囲ですので、限界がありそうです。

 さて、湿式粉砕の問いを受けて、この日もそば打ちを会長のペースで終了しました。札幌新川そばの会でのそば打ちで、「2回目以降四つだしをしたことがないので、大丈夫なのかな。」と少し不安に成りだしました。

この日の私が打った生粉打ち蕎麦も、私には美味しかった・・・です。

(参考文献)
2014 北村豊 マイクロウエットミリングによる機能性食品の開発〈改良型電動石臼を用いた湿式粉砕装置〉 筑波大学生命環境系 (2016116日確認  http://shingi.jst.go.jp/abst/p/14/1419/tsukuba03.pdf
1999 前田又兵衛他 うどん練りの発想による連続練りミキサの開発 セメントコンクリート  628, 20-27, 1999-06-10  セメント協会
1999     大西利光他         そば打ちの美学 川辺書林

(記録)つゆ造り(8) 辛つゆ と 甘つゆ

2016年1月24日(日曜)

朝からジムに行き、夕方帰宅後につゆを造りました。
辛つゆと甘つゆと、それぞれ別々にだしをひきました。また、次回用でかえしも造りました。
辛つゆと甘つゆ共に用いた「かえし」は昨年11月26日に作ったものを用いています。


<辛つゆ⑫>
【だし⑨辛つゆ用】 
鰹節       200g
始の水量   3000ml
上がり水量   1475ml
歩留り   49.2%
鰹比率   13.6%

【辛つゆ】
だし      1475ml
かえし⑤    500ml

<甘つゆ③>
【だし⑩甘つゆ用】
鰹節         50g
宗田鰹節      50g
鯖節          50g
ムロアジ      40g
始の水量   3000ml
上がり水量   2000ml
歩留り    66.7%
鰹比率     9.5%

【甘つゆ】
かえし⑤   230ml
だし⑩    2000ml
昆布だし   200ml
酒       100ml
味醂      80ml


辛つゆと甘つゆの節は、札幌市の大熊商店より購入。
味醂:九重櫻/九重味醂株 
清酒:貴造仕込み/小山本家酒造
昆布:利尻産昆布


<かえし⑥>
醤油/生醤油/安藤醸造          1000ml
砂糖/きび本搾り砂糖/中日本氷糖㈱  190g
味醂/九重櫻/九重味醂株         220g
米酢/純米醸造 富士酢/株飯尾醸造  100g

材料は、基本的に有機栽培を用い、どうしても無い物は、原料が明らかな物を用いています。
特に、醤油は生造りで、何も混ぜ物が入っていない醤油です。安藤醸造偉いです。この醤油が本当の醤油の味を出します。「●膳」醤油は混ぜ物だらけです。また、砂糖はあえて、ミネラル豊富な物を用いています。江戸時代は精製できないので、ミネラル豊富な砂糖を使用していました。今のそば屋が用いる砂糖は、近代化以降の安価な砂糖を使用しております。これが蕎麦つゆ用という砂糖は怪しいのではないかと思われます。ミネラルを取り除いてしまっており、本当の味では無いのではないかと思われます。

今日は、甘つゆで暖かい蕎麦をいただきました。甘つゆは、美味しかったです。
左;甘つゆ  右;辛つゆ

そば打ち記録(33) 札幌新川そばの会初打ち会?

2016年1月23日

天候:曇り
気温:マイナス1℃

札幌新川そばの会での2016年初打ち会?でした。
昨年大晦日以来の、札幌新川そばの会でのそば打ちです。
昨年までは、1月は全てお休みでしたが、今年は23日に会を開催下さったので、ありがたいです。
8時30分頃に到着して、会の皆様に新年の挨拶をして、早々に、そばに向かい合いました。
今日は、札幌新川そばの会のそば粉1kgと、昨年山形に行った際に購入してきた、次年子そば店のそば粉1kgを打つことにしました。
最初は、ウォーミングアップで打ち慣れている、会のそば粉から始めました。
今日の練習目的の第一は、のし過ぎないようにすることで、1.2mm~1.3mmでのし終えることです。第二は、四つ出しで、同じ回数を4回行った際に、それぞれの角がどのようになるのかを検証することです。

<1回目>
そば粉:札幌新川そばの会
品種:キタワセ類似種
製粉:最近
重量:1kg
加水量(率):560ml(56%)

 鉢の大きなものが無く、小さな削り出しの鉢を使用しての水回しから開始です。本日の水回しは、8分で終了でした。水量は、560ml入りましたが、状態は良かったと思われます。
四つ出しですが、同じ回数を行い、1回目と3回目が弱いことが良く分かりました。奇数回ですので、厚い状態で巻き出した内側が出ていないので、これの対策を次回検討します。四つだしのやり直しを行い、のして行きました。厚さに注意し、1.27mm程度でそろえることができました。のし過ぎないという課題は、今回はクリアーでした。


<2回目>
そば粉:山形県大石田町 次年子
品種:次年子そば(在来種)
製粉:1.5ヵ月以上前
重量:1kg
加水量(率):550ml(55%)

 水を加えると、次年子そば独特のグレー色に変わっていきました。
そば粉につなぎが入っているのではないかと思われるような感覚で、水回しが終了でした。その後、のし、切と順調にいきました。会長が今日試食してみようということで、私の打ったそばを試食してくださることになりました。田舎蕎麦なので、厚めにのし、それに合わせて切ったので、1.5mm程度でした。また、ゆで時間は、札幌新川そばの会の蕎麦より少し長めになりました。

 皆で試食していただきましたが、会長と私の意見は同じで、「このそばつなぎが入っていますよね?」という見解になりました。水回しの段階から、生粉ではないのでは?と疑問を持っていたので、食べてみて、会長と同意見なのでその感覚が正しいのではないかと思えます。
 購入段階で、次年子そば店の方に、店で出しているそばは外一と言うことを確認して、お店でそばを食べました。この帰りに、つなぎなしでそば粉だけで分けていただくことを快諾いただいて、そば粉のみで購入したつもりでいました。もしかすると、いただいたそば粉は、店で出すそば同様の粉で、外一でつなぎが入っている物を受け取ってきたのかもしれない?と思えます。
何しろ、ツルツルなので、生粉ではありえない喉越しです。加えて、香りと味もあまり感じられませんでした。このそば粉は、購入後2カ月近く経つので、少し打つのが遅かったのかもしれません。これは、早めに打てばよかったなと反省です。

 札幌新川そばの会以外のそば粉を、昨年末に行けたところで購入し、山形県大石田では、次年子そば在来種1店舗、来迎寺在来種2店舗、福島県山都在来種1店舗と購入し、それぞれを打ち終えました。山都のそば粉は、蕎麦になりませんでした。水をいくら入れても纏らず、それを何とかまとめて切りましたが、全く蕎麦として食べられる状態になりませんでした。来迎寺の2店舗の蕎麦は、どちらも香り味と良かったです。最後に打ったのが今日の次年子でした。
 
 札幌新川そばの会のそば粉は、生粉打ちに適するそば粉を研究しているので、本当に打ちやすいですし、蕎麦は美味しいです。それに甘んじてはいけないので、色々なそば粉で生粉打ちができるようチャレンジとして、ここに示したそば粉以外に6種類で合計10種類のそば粉にチャレンジしました。結果は、10戦9勝1敗でした。福島県山都の在来種そば粉に敗れたので、また、チャレンジしてみたいです。

札幌新川そばの会のそば粉と削り出しの鉢
札幌新川そばの会のそば粉
次年子そば粉
次年子そば粉





2016年1月18日月曜日

そばとわたし(5) ふるいも あたらし (そば打ち語録)

2016年1月17日  ふるいも あたらし

 2014517日の午前9時25分、初めて「篩」という物を手に持ったのではないかと思う。これまでの長い人生の中で、篩は見たことはあるが、使ったことは無いのではないかと。単身赴任が長く、料理は一通り出来るが、篩を使うような料理や、お菓子を作ったことが無い。粉を扱うのは、そばが初めてのようである。既に、札幌新川そばの会に初参加した際のことは、別のところでも述べたが、改めて、初日にお世話になったのは、K氏であった。

 そば打ちにおいて、最初に教えていただいた技術的なことは、篩の扱い方ででした

  K氏曰く、
   「ふるいの持ち方は、左手で篩の継ぎ目を持ち、篩う。」
   「そこに、つなぎ目があるでしょう?」
  という声掛けであった。

 なるほど、篩にはつなぎ目があるのです。秋田県大館市名産の「曲げわっぱ」と同じように、1周してきた板をきれいに継いでいます。「なるほど、このつなぎ目を持つのは、他の場所より強靭にできているからなのだ。」と一人感じ入りました。

  次いで、K氏曰く、
   「場合によっては、右手内側甲で篩の端を叩きながら篩ってください。」

 なぜ、手の内側なのかは、未だに本当の理由を理解できていません。私の理解は、内側甲で叩くのであれば、あまり強く叩くことが出来ないので、それが良いのではないかと、勝手に理解しています。

 後で分かったことですが、篩を使うと、その粉の状態を理解できるようです。こんな経験がありました。それまでは、常に教室が用意して下さった粉を用いていたので、毎回大体同じように粉を篩うと、同じように下に落ちます。色々なそば粉を使ってそばを打ちはじめた、最近になってからのことです。粉を篩に入れ一度軽く振るった途端に、フワットすべての粉が下に落ちた粉がありました。これとは全く反対に、いくら篩っても落ちない粉もあります。水分量、粉の粒子分布等様々な原因があると思われますが、粉は千差万別です。ただ漫然と粉を篩っていてはいけないのかもしれないと、最近、気づきました。

 篩と言えば、製粉においては大変重要な役目を担う道具です。玄ソバや丸抜きを製粉機にかけ、そば粉となったものの中から、どの粒子群の粉を用いるかの選別に必須の道具で、そばを扱う人には重要な道具なのだということが、最近になって分かりました。
 
 篩の企画も複雑で、日本では昔から1寸(30.303 mm)あたりの眼の数を「号」で示してきたそうです。例えば、1寸あたりに50目あれば50号と呼んでいました。これが近年では、1インチ(25.4mm)あたりの目の数、即ち、メッシュという単位表記になりました。
 その後、1インチあたりに●目あっても、目の開き方は構成される糸の太さ等により異なるので、「目開きの大きさ」で表すようになっているようです。世界標準が設定され、日本は、ISOで決められているふるい目開きのいくつかの規格の中で、R40/3シリーズの目開きの数列を使用しています。アメリカ、イギリス、オーストラリア、オランダ、南アフリカ、インドと同様の規格を用いています。この規格の目開きと日本工業規格JISで示す目開きは同じサイズです。これとは違う規格に、R20シリーズの目開きの数列を使用している国としてドイツ、フランス、カナダがあるようです(標準篩についてのホームページ)。

 自家製粉をしているそば店では、この篩を巧みに扱い、自店で独自のそば粉配合を行い、そば打ちを行っているようです(2007大野よし郎 1997阿部孝雄)。私には、製粉機で挽いたそば粉を、どの様な粒度の粉を抽出し、混ぜ合わせると美味しいそば粉を作ることができるのかという知見は、まだありません。この研究をされている方が、そば店には居られますが、その配合等は、あまり公表されていないので分からないところが多いようです。そばが科学的に発達してくれば、どんな粒度分布が最もおいしい蕎麦になるということが判明してくると思います。そばに対する科学的アプローチが遅れている原因は、これらが明らかでない点にあるのかもしれません。

 最初に教えていただいたそば打ち道具の篩は、相当深いところでそば打ちに関わっているのだということを最近やっと理解しました。こんな研究も面白いのかもしれないと思うところであります。

 さて、初めて篩の使い方を教えていただき、左手で篩の継ぎ目を持ち、右手の外側甲でトントンと軽く叩きながら、そば粉を振り落すことができました。篩終えたそば粉から、美味しそうなそばの香りが届きました。

(参考文献)
2007 太野よし郎 蕎麦曼荼羅 展望社
1997 阿部孝雄 竹やぶの蕎麦 三水社
標準篩についてホームページ(http://www.as-1.co.jp/academy/19/19.html 201616日確認)

2016年1月17日日曜日

そば打ち記録(32) 自宅でそば打ち

2016年1月17日(日) 昨年9月以来の自宅でそば打ちでした。

2016年お正月は、お餅をいただいたので久しぶりに蕎麦抜きの日が続き、8日から蕎麦に戻りました。

2016年の初打ちは、先週末の金曜日(8日)に、名人で、昨年の生粉打ち準名人の保住さんから電話でお誘いをいただき、「明日の土曜日にそば打ちするんだけど、来ませんか?」ということで、急遽上砂川に伺い、初打ちをしました。
この時は、生粉打ち1kgと、試験用ということで二八1kgの二回を打ちました。上砂川では例会とのことですが、参加者皆さんが全麺協の上位段持ちの方ばかりで、最低段位が3段ですので、私の存在自体が不自然な状況です。練習している方はお一人だけで、4段を今年受けるのでと練習されていました。私は、皆さんに見られ、保住さんの教えをいただきながら、無事に初打ちを終えました。

今日は、トレーニングジムで8時間運動後に、蕎麦が無いことが分かり、急遽そば打ちでした。今週食べる分の1kgを打ちました。

粉は、昨年末までに色々と購入したのがあるので、その中から、札幌新川そばの会の厚田産のそば粉にしました。
やはり、このそば粉は生粉打ちにはもってこいです。他の粉でそばを打つことが増えてきたので、つくづくそう思います。そばとしては、香りが少ないことと喉越しが良すぎる(生粉打ち蕎麦には珍しい喉越しです)というところに難がありますが、それ以外の問題が見当たらない粉です。この粉と他の粉を混ぜるのも面白いのかもしれません。今度挑戦してみます。

<本日のそば打ち>
天気:曇り
気温:-2度
そば粉:厚岸産そば粉(キタワセに近い)
重量:1kg
加水量:48ml
加水率:48%
打ち時間:1時間



2016年1月11日月曜日

そばとわたし(4) はやく やわらかく  (そば打ち語録)

2016年1月10日  はやく やわらかく  (そば打ち語録)

  そば打ちを習い始めて、2回目の札幌新川そばの会への参加の際でした。会長から、直接ご教授いただきました。

  はじめに、会長曰く、
    
    「そば打ちで重要なことは、そばにストレスをかけないこと。」
    「そのためには、時間をかけないことと、無駄な力をかけないこと。」

  私は、心の中で、「早く打つのが重要なんだ。あとは、力をかけずにできればよいのか?」と、言われたことを、言葉として理解をしましたが、具体的に何をどうすれば良いのかは、全く分からない状況でした。それもそうです、札幌新川そばの会に来て、まだ2回目です。前回の初訪問時に、K氏より2回ほど、そばを打つ手順を教えていただきました。今日は、前回教えていただいた手順通りに、初回訪問時に写真で撮った「江戸そば打ち手順のポスター」の通りに打ってみるということに集中していました。前回のそば打ちで教えていただいたことを思い出し、前の晩にはWebで名人のそば打ちのビデオを確認し、今日を迎えています。

  手順よりも、そもそもそば打ちに重要なことは、「○×」と言われても、頭に入りませんでした。「○×」が、「ストレスを与えずに」ですので、余計に頭の中がボーとしています。早くと言われても、手順を思い出しながらなので、パッパとは行きそうにないし、力を入れるなと言われても、前回、こねたりのしたりする時には、ある程度力が必要であったように記憶しています。「どうしたらよいのだろうか?」と思案していると、

  ふたたび、会長曰く、

    「二八ではないので、小麦粉が入っていないから力は要らない。
     力を加えると麺にストレスがかかり、美味しくなくなる。」

  と、追い打ちをかけて、ますます私を混乱の渦に巻き込みました。

  小麦粉が入ると、なぜ力が居るのか?力が加わると、なぜ美味しくなくなるのか?と、私の頭の中は疑問だらけです。この疑問は、1年半たった現在も、完全に解決しておらず、継続した課題として私に纏わりついています。
 
  本日只今の時点では、次のような理解の範囲です。「そばにストレスをかけずに打つことが、重要なことである。」という指摘は、確かだということです。しかし、具体的にこれを成し遂げるために必要な技術は、明らかではなく、ましてや身についてなどいません。では、現時点での理解レベルで、その内容を明らかにしてみます。

  You Tubeには沢山の名人の方々のそば打ちの動画が配信されています。これらを、ストレスをかけずに早くという視点で見ていると、皆さんの動きに無駄が無いのが良く分かります。水回し、こね、のし、切りと、一つひとつのやり方は、名人それぞれで多少異なりますが、動作に無駄が無いこととが良く分かります。昨年(2015年)の幌加内のソバ打ち名人戦を見学に行きました。出場された皆さんの動きに、無駄を感じませんでした。稀に、おかしな動きをされる方が居ると、それが目立つと言う具合でした。早くというのは、そばに水を加えて麺体にするまで、より時間がかからなければ、乾きも少ないし、加える水は少なくて済むし、しっとりとした蕎麦が出来上がるので、蕎麦が美味しくなるのだと理解しています。

もう一方の、力を入れずについてです。そばを打つ過程を改めて簡単に考えてみると、粉である個体を水である液体に分散させ、液体上に分散する個体の粒子分布を均一化します。次に、この紛体に圧力をかけて形成するという作業です。形成する際には、当然力が加わるわけで、力を加えることは、粉と粉の間の距離を近づけることになります。液体中の紛体間の相互作用には、ファン・デル・ワールス力による引力と、粒子表面に作られる電気二重層における反発作用が働きます。引っ張り合う力と反発する力の両方が存在することになります。
 
  この時、粉の1粒と別の粉粒間には距離があります。粒間の反発力と結合力は、その距離により変化します。2つの粒が少し離れた距離から近づいてくる時、一定の距離までは粒同士は反発します。この状態は、個体を浮遊する液体間に生じるイオン由来の反発の状態です。この状態を過ぎるほど距離が近づくと、急に粉粒同士は引合い結合します。その後一層距離が近づくと、また、強く反発するという性質を持ちます(2014内藤牧男他)。
 
  例えば、こねあがったそばの塊に一気に強い力を加えて圧縮する、ローラーに掛けるような作業をすると、最初の反発状態を越えて、引力状態にまで近づけてしまうことになり、粉同士は強く結び付きます。粒子同士が強く結び付くので、その集合体である麺は硬くなります。これが、私が推察する、手打ちでない機械打ちの蕎麦が硬くなる理由だと思われます。あくまで推察ですので、検証はされていません。私の推察をそば打ちの現場での所作にて次のような資料がありますので、まんざら推察が間違ってはいないと思われます。
 
  機械打ちをやっている老舗のそば屋さんでは、ローラーに掛ける前に、手で薄くして掛けるという作業をしており、重要な作業と捉えています(1995 堀田平七郎)。この作業をする理由は、一気に強い力を粒子にかけないように注意しているそうです。この老舗そば店では、店の重要な作業と捉えています。

  手打ちの場合は、そこまで力は加わらないとしても、部分で見ると、相当の力が加わります。力の加わった部分は粉粒間の距離が一定の距離以上に近づき過ぎ、粉粒間は引力有意で結合するので硬い蕎麦になると思われます。部分単位でも強い力がかからないように考えて、こねてのせば、粒子間に余計は力が加わらないので、粒同士が一定の距離で反発しあったまま結合している状態が作れます。すると、麺が硬くなることはなく、柔らかく出来上がることになるのではないかと思います。そのようなそばは、無駄に硬い麺体ではなく、柔らかいがしっかりした麺になるのだと思います。

ただし、どうしたらそんなそばになるのかは、暗中模索です。
つなぎを加えた場合は、ここで示した液体中の個体に関する作用に加えて、粘性が加わります。ここでは、触れません。

  「はやく やわらかく」は、そば打ち2日目で教えていただいたことですが、その後も色々な表現や場面で出くわします。本当に重要な内容で、私は、究極の美味しい生粉打ち蕎麦を打つ方法を示していると考えています。

  「そばとわたし」では、これに関連するワードが、これからも何度か出てくると思います。その際に、また何度でも触れていきます。
 
  さて、頭の中が混乱したまま、第2回目のそば打ちを開始しました。会長に言われるままに、会長のロボットとなった私のチャレンジ開始です。何しろ、思考停止状態ですので。
  500gを2回に分けて打ちました。四つ出しせずに、のしながら台形ともいえない複雑な形、3歳児に絵を描かせるとこんな形を書くかなというような形に成形されたそばが目の前にあります。最終的には、蕎麦にはなりました。
 
  はたしてこの蕎麦が硬いのか柔らかいのかは全く意識していませんでした。でも、自分で打った蕎麦は、食べてみたら美味しかった。

(参考文献)
2014 内藤牧男他 粉体の科学 日刊工業新聞社 
1995  堀田平七郎 江戸そば一筋 並木薮蕎麦そば遺文 柴田書店

2016年1月5日火曜日

そばとわたし(3) てぬぐい せっけん (そば打ち語録) 

2016年1月5日 てぬぐい せっけん  (そば打ち語録)

 札幌新川そばの会でそば打ちを習い始めて2カ月ほど経過した時ですので、そば粉から蕎麦の麺に造り上げることができるようになった頃です。初めてお会いした先輩だと思われる方が、私に近寄ってきました。強面で、声も低い方で、最初は何を言われたのか分かりませんでした。一心不乱に、習いたてのそば打ちをしているので、思ったより集中していたのだと思います。そう言えば、会社での業務中に相当集中して業務を行なっている時に、稀に何か言われても気が付かないということがあります。認知科学的には、フロー状態(2006 Mihaly )である時です。

 この時も、そんな状態だったのだと思います。聞き返すと、大変不機嫌そうに、「蕎麦は食べ物だよ、髪が落ちて蕎麦に入ることもあるよ。」と言われました。「ハッ」としました。そうです、私の頭には何も覆うものがありません。ご指摘の通りです。蕎麦は食品です、清潔な状況下で造られるように管理するのが当たり前です。大学生の頃から会社に入ってからも、「薬」を扱うところに居るにも関わらず、そんなことにも気付けずにいることに恥じ入りました。

 ご指摘ただいた方は、札幌新川そばの会に所属する準名人の方でした。普段は、あまり多く話しませんが、短い言葉で相手に問うようにして指導してくださいます。これを切欠に、色々なことを教えていただきました。過去形で止めたのは、昨年末に逝去されたからです。後になって、分かったことですが、ご本人は一度蕎麦店を持った経験がるそうです。そのような方にとって、食品を扱っているということを意識していないことに、不信感を抱かれたのだと思います。

 このことがあって、そばを打つという行為は、食に関わっているのであると、改めて考えなおしました。そば打ちを始める前に、手を洗ったか?と問うと、家を出る際に洗いましたが、札幌新川そばの会に着いてから洗わずにそば打ちを開始していたこともありました。家からここまで、色々な物に触れているわけですので、そば打ちを始める前に再度手洗いすべきでした。当時、札幌新川そばの会の手洗い場所には、固形石鹸が置いてありました。結構古くから使用されていると思われるような顔をした石鹸でした。皆さんが毎回使用しているような石鹸とは思えない状態です。私も含めて、水洗い程度で済ませているのかなと思われました。その後、数回後のそばの会の際には、今風の除菌作用のある液体石鹸が手洗い場に現われました。良いことです。

 私の頭には、最初に学生時代に使用していた昔のバンダナが載りました。数回使いましたが、少し小さいので止めです。その後は、手拭いが載っております。頭全体をカバーできるので、帽子より良いと思われます。
 全麺協の段位試験では、手洗いや衛生への配慮に対する評価項目があります。その場限りとならないように、常に衛生に気を付けていたいと思います。

習慣になると気付かずにできるようになるので、私のそば打ちのルーティン(大リーグの一郎や、ラグビー五郎丸に代表されるルーティン)となるように、爪を切る、手を洗う、手拭いを被る、使用する道具は全て洗う(計量カップやタオル等)、拭く(包丁、駒板、麺棒、篩等)ことにしました。

 札幌新川そばの会では、そば打ち後に皆で、試食会を行います。試食をするので、その後に使用した食器などの洗いも必要になります。このときに使用するタオルもたくさん用意されています。タオルも、定期的に漂白をしてくださっています。皆様に感謝です。

 手を洗おう、手拭い被ろう、カップは洗おう、鉢は拭こう・・・。言い聞かせながら一つひとつ確認していくことで、習慣となるようにしてしまうのが得策です。
 すごく大切なことを教授いただいた、S準名人のご冥福をお祈り申し上げます。

(参考文献)
2006 Mihaly Csikszentmihalyi  Study guide for Flow: the Psychology of Optimal Experience Cram101