札幌そば研究センター

2016年1月18日月曜日

そばとわたし(5) ふるいも あたらし (そば打ち語録)

2016年1月17日  ふるいも あたらし

 2014517日の午前9時25分、初めて「篩」という物を手に持ったのではないかと思う。これまでの長い人生の中で、篩は見たことはあるが、使ったことは無いのではないかと。単身赴任が長く、料理は一通り出来るが、篩を使うような料理や、お菓子を作ったことが無い。粉を扱うのは、そばが初めてのようである。既に、札幌新川そばの会に初参加した際のことは、別のところでも述べたが、改めて、初日にお世話になったのは、K氏であった。

 そば打ちにおいて、最初に教えていただいた技術的なことは、篩の扱い方ででした

  K氏曰く、
   「ふるいの持ち方は、左手で篩の継ぎ目を持ち、篩う。」
   「そこに、つなぎ目があるでしょう?」
  という声掛けであった。

 なるほど、篩にはつなぎ目があるのです。秋田県大館市名産の「曲げわっぱ」と同じように、1周してきた板をきれいに継いでいます。「なるほど、このつなぎ目を持つのは、他の場所より強靭にできているからなのだ。」と一人感じ入りました。

  次いで、K氏曰く、
   「場合によっては、右手内側甲で篩の端を叩きながら篩ってください。」

 なぜ、手の内側なのかは、未だに本当の理由を理解できていません。私の理解は、内側甲で叩くのであれば、あまり強く叩くことが出来ないので、それが良いのではないかと、勝手に理解しています。

 後で分かったことですが、篩を使うと、その粉の状態を理解できるようです。こんな経験がありました。それまでは、常に教室が用意して下さった粉を用いていたので、毎回大体同じように粉を篩うと、同じように下に落ちます。色々なそば粉を使ってそばを打ちはじめた、最近になってからのことです。粉を篩に入れ一度軽く振るった途端に、フワットすべての粉が下に落ちた粉がありました。これとは全く反対に、いくら篩っても落ちない粉もあります。水分量、粉の粒子分布等様々な原因があると思われますが、粉は千差万別です。ただ漫然と粉を篩っていてはいけないのかもしれないと、最近、気づきました。

 篩と言えば、製粉においては大変重要な役目を担う道具です。玄ソバや丸抜きを製粉機にかけ、そば粉となったものの中から、どの粒子群の粉を用いるかの選別に必須の道具で、そばを扱う人には重要な道具なのだということが、最近になって分かりました。
 
 篩の企画も複雑で、日本では昔から1寸(30.303 mm)あたりの眼の数を「号」で示してきたそうです。例えば、1寸あたりに50目あれば50号と呼んでいました。これが近年では、1インチ(25.4mm)あたりの目の数、即ち、メッシュという単位表記になりました。
 その後、1インチあたりに●目あっても、目の開き方は構成される糸の太さ等により異なるので、「目開きの大きさ」で表すようになっているようです。世界標準が設定され、日本は、ISOで決められているふるい目開きのいくつかの規格の中で、R40/3シリーズの目開きの数列を使用しています。アメリカ、イギリス、オーストラリア、オランダ、南アフリカ、インドと同様の規格を用いています。この規格の目開きと日本工業規格JISで示す目開きは同じサイズです。これとは違う規格に、R20シリーズの目開きの数列を使用している国としてドイツ、フランス、カナダがあるようです(標準篩についてのホームページ)。

 自家製粉をしているそば店では、この篩を巧みに扱い、自店で独自のそば粉配合を行い、そば打ちを行っているようです(2007大野よし郎 1997阿部孝雄)。私には、製粉機で挽いたそば粉を、どの様な粒度の粉を抽出し、混ぜ合わせると美味しいそば粉を作ることができるのかという知見は、まだありません。この研究をされている方が、そば店には居られますが、その配合等は、あまり公表されていないので分からないところが多いようです。そばが科学的に発達してくれば、どんな粒度分布が最もおいしい蕎麦になるということが判明してくると思います。そばに対する科学的アプローチが遅れている原因は、これらが明らかでない点にあるのかもしれません。

 最初に教えていただいたそば打ち道具の篩は、相当深いところでそば打ちに関わっているのだということを最近やっと理解しました。こんな研究も面白いのかもしれないと思うところであります。

 さて、初めて篩の使い方を教えていただき、左手で篩の継ぎ目を持ち、右手の外側甲でトントンと軽く叩きながら、そば粉を振り落すことができました。篩終えたそば粉から、美味しそうなそばの香りが届きました。

(参考文献)
2007 太野よし郎 蕎麦曼荼羅 展望社
1997 阿部孝雄 竹やぶの蕎麦 三水社
標準篩についてホームページ(http://www.as-1.co.jp/academy/19/19.html 201616日確認)

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