札幌そば研究センター

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2018年3月25日日曜日

そば打ち記録(75) 自家製紛粒挽きそば粉 を オヤマボクチで打つ

昨年から続いている、丸抜きを自家手引き石臼製粉し20メッシュで篩った超粗びき(粒挽きという方が合いそう)粉を、何とかして「そば切り」にという試みが続いています。

前回までは、水や湯を用いてのチャレンジを行い、湯捏ねであればなんとか麵にはなりますが、その長さは最大で25cm程度であり、折り返しで殆どが切れるという状態です。少しだけ吸い込むことができる長さですが、もう少しつながらないかという思いがあります。そこで、長野県の県北地域で昔からそばのつなぎに用いられていて、無味無臭でそばの香りや味に影響しないという謳い文句の、「オヤマボクチ」を探して取り寄せました。これを用いてそばを打つことにチャレンジです。

オヤマボクチは、キク科ヤマボクチ属の多年草でアザミ類ですが、山菜として「ヤマゴボウ」と称されています。根は漬け物にするなどして食べられています。また、氷餅の副原料として利用するほか、草餅や笹団子の原料として、ヨモギの代わりにオヤマボクチの葉を用いることもあるそうです。

信州のそばで幻のそばに 「富倉そば」があります。飯山市富倉地区に伝わる伝統のそばで、その美味しさには定評があります。富倉は、飯山と新潟県の新井を結ぶ国道202号線沿いの部落です。「富倉そば」は、ヤマゴボウ(山牛蒡)の繊維をつなぎに使った色の濃いそばで、このつなぎを使うことでそば粉の味が変わらないため十割そばのような香りと、つなぎ入りそばの喉ごしの良さを同時に味わえ、シコシコとした独特の歯触りがあります。このヤマゴボウがオヤマボクチです。

オヤマボクチの茸毛(じょうもう)と称している葉の繊維を使います。 葉の太い葉脈を抜き、手で揉んでは干しを繰り返して、残った繊維を取り出し、灰汁(アク)抜きをして乾燥させたたひとつまみをつなぎに使っています。

探し当てたオヤマボクチは、この大変な作業を終えて「すぐに使えるオヤマボクチ」として販売されています。JA長野の関連で「おたり山菜の会」という組織でオヤマボクチを栽培、処理して、そのまま加えることでオヤマボクチとして使用できるものを開発し販売してます。ここに連絡し、オヤマボクチを分けていただきました。これを用いてのチャレンジです。


オヤマボクチを用いたそば打ちの説明書き通りにやってみようということで、記載の通りに実施です。ただし、分量は説明書きの倍量で1kgのそば粉に5g(2袋)のオヤマボクチを用いました。最初にオヤマボクチを戻す湯の量も説明書きの倍量です。

実際にやってみて、この最初の量のお湯に戻されたオヤマボクチでは、粉がまとまりません。よって、追加の水を加えるのですが、湯捏ねの要領で始めたので、その後の追加の水がそば粉に入っていきません。名人が隣で曰く「湯捏ねなら湯量が少なすぎるし、普通の水回しをするのであれば、最初にまとめすぎなのでこれ以上水が入っていかない。」「どうしようもないかもね?」ということです。それでも諦められないので、少しづつ水を加えて、ゆっくり練り込み、また水を少し加えるの連続で捏ねを中心にしてやってみました。山都の宮古地区で教えていただいた要領です。

しばらくすると、そばの塊にテリが出てきて、少しづつまとまってきました。ひび割れも最小限で抑えられます。捏ねるのに必要な力は普段の3倍くらいかかります。なかなか、捏ねられないほど弾力があります。これがオヤマボクチの粘りなのでしょうね。

丸くのして、四つだしをしようと麵を麺棒に巻きました。すると、麵体がややひび割れます。そうでした、これは元々が超粗びき(粒挽き)で粒々が見えるくらい、時にはそばの丸抜きの形のまま残っているくらい粗いそば粉であることを思いまだしました。前回までの湯捏ねでは、細心の注意で扱い、丸のしや四つだしなどは以ての外で、そのままのして畳んで切るという麵でした。オヤマボクチを加えているとはいえ、粗びきの性質はそのままでした。しかし、これもオヤマボクチのなせる業なのかもしれません。そのような麵体であることを忘れさせるほど、扱い易くなっています。

これらのハードルを抜けて、本のしで一定の厚さまでのそうとしましたが、最終的に目指している厚さに至る前に抵抗にあいました。なかなかのせずに、薄くならないのです。これ以上圧を加えると、今度はそばの麵がひび割れてきて切れそうになります。薄くしたいけど、許してくれませんでした。この辺の腕が足りないのだなと反省です。

麵をたたんで切る際に、また、オヤマボクチの力を感じました。切るときに用いる圧力は、普段の3倍以上の力が必要です。また、切った断面が上下にくっつきます。説明には、打ち粉は多めにと記載があり、普段より多く加えていますが、その程度ではダメなようです。切り終えて、上下にくっついているそばをほぐして終了です。やはり、超粗びきによる切れは存在しますが、湯だけでこねたそばよりはつながっているのは明らかでした。

さて、オヤマボクチを加えたそばを茹でてみました。ゆであがった麵は、その艶があるのが特徴です。オヤマボクチは、無味無臭といいます。しかし、小麦粉をつなぎに加えたようなことはありませんが、ほんのわずかですが香りがします。気づかないこともありそうですが微量な香りがあります。また、麵は艶だけでなく、喉越しを与えてくれます。十割そばの粗びき粉で感じる喉越しより、スルッと通りますのでニ八そばのようなのど越しになります。これとは反対に、超粗びきそばを水や湯だけでつないだそばに特有の雑穀感やその香りが失われます。一言でいうと、「旨味を消してのど越し確保。」ということでしょうか。



娘は、隣で「前の方(湯ごね)が断然美味しい。」と言っています。
超粗びきそばの旨味を楽しむのであれば、オヤマボクチを用いずにという方法になりそうです。超粗びきそばを喉越しも楽しみながらということであれば、オヤマボクチの出番があります。両方別々に楽しむという方法も良いですね。

オヤマボクチでつないだそばも、汁を使用して食す、岩塩で試す、岩塩とオリーブオイルで試す、燻製塩で、ミント塩で試してみました。岩塩だけでが一番おいしかったです。汁は最後に少しだけいただきましたが、汁の味にそばの味は敵わないので、そばの味と香りが死んでしまいます。
何か、新たな汁の開発が必要です。呆然とアイデアがあるのですが、閃きを待ちます。

2018年2月18日日曜日

そば打ち記録(74) 石臼自家製紛粗びき粉の生粉打ち2回の比較

2月10日、17日の両日で、丸抜きを石臼手回し自家製粉を用いて、十割そばを打ちました。

10日は、昨年購入した牡丹そばの丸抜きを用いました。
少し茶色の実を含んでいました。
これを、1回石臼で挽いて、20メッシュ(18目)篩でふるい、残りを再度挽いて全てが20メッシュを通る状態にし、歩留まり100%の粉での十割そば打ちでした。
何とか繋がりましたが、少し置いたそばは切れやすくなります。
昼頃に打ち夜の段階で茹でると、半分以上が切れてしまします。殆ど触れない状態でも同様に切れます。
茹でたそばの味は、蘞味を感じます。やはり茶色がかったそばの実を含むだけで香りが落ちます。また、透明度も落ちます。ということで、少し残念な状況でした。


17日は新たに音威子府の加藤様より丸抜きを送っていただき、それを用いて石臼引きです。
挽いている段階でのそば粉の香りが違いました。良いそばの香りです。一度挽いた段階で20メッシュで篩った時に残る外皮80g(1kgの丸抜きに対して)は、二度挽きせずに捨てました。よって、この段階で92%の歩留まりです。これを打つ前に、同じ20メッシュで篩うと残る20gの外皮がまた出てきます。これも無理に篩わずに捨てました。よって、実際の歩留まりは90%です。


これで同じように打てました。茹でたそばの色は透明感のある薄い緑色で、10日の茶色いそばとは全く異なる表情でした。味も、蘞味を感じずに、そばの味を感じられます。切れ具合は、多少切れにくいですが、25cmをキープできるのは10%程度でやはり切れます。これは、最初にこのような粗びきそばを体験した「地水庵」でも切れることには触れており、どうしても切れやすいようです。

この切れやすいところを改善したのが、木曽の「ZCOBO時香忘」でオヤマボクチを使用されているようです。「超々粗挽そば」に「オヤマボクチ」をつなぎとして使用するか否かについては、賛否両論あると思います。

勿論、オヤマボクチが小麦粉によるつなぎとは異なり、小麦粉がそばに与える影響、すなわち、小麦粉臭と小麦粉の味が、そばの味を感じられなくすることは避けられるとは思います。しかし、実際にオヤマボクチがそばの香りと味にどのように影響するのかは、実際に使用したことが無いのでわかりません。オヤマボクチでのつなぎを一度試してみる価値はあるかもしれます。これは、喉越しに与える影響をどうとらえるかと同義と考えて良いのだと思います。

この超々粗びきそばがもう少し長くつながっている状態で食すとどんな影響があるのかがわかりません。つながる必要が無いのかもしれません。この立ち位置にいるのが、地水庵だと思われます。一方、これをつないで食す方が良いという立場にいるのが、時香忘だと思われます(ただし、時香忘の高田さんとは直接話をしていないので想像ですが)。

オヤマボクチ使用の可否の検討は今後のチャレンジ目標です。

10日の蕎麦


17日の蕎麦


2017年11月29日水曜日

そば紀行(28)鹿落堂 仙台市

鹿落堂(ししおちどう)

仙台市都心部の南西、広瀬川の蛇行部に挟まれた経ケ峯にある伊達政宗を祀る霊廟である瑞鳳殿の東側に鹿落坂(ししおちざか)があります。霊屋下から太白区向山にまたがる坂道です。この坂の東には広瀬川、西には経が峯があるともいえます。この坂を霊屋下から登り切った右手に今日伺った鹿落堂(ししおちどう)があります。崖に張り付くように建つガラス張りの素敵なお店です。斜め向かいには、中華で有名なKUROMORIがあります。

暖簾もモダンで、店内も素敵なカウンター席があり、眼下には広瀬川の蛇行が良く見えます。店に入ると左手に手作りの日用品が並んでいて、正面はカウンター席とその奥にテーブル席。その左手には大きなそば打ち台があります。日用品の置かれた脇を二階へ上がると、そこにもカウンター席とテーブル席があります。デザイン性の高い店内で、このように洗練したデザインの中に居るのは、大変気持ちが良いです。
わたしは、この二階のテーブル席につきました。

メニューを見ると、十割蕎麦御膳、二八蕎麦御膳、板そば、かも南蛮蕎麦などが並んでいます。自家製粉手打ち十割挽きぐるみ蕎麦御膳は、「鳴子川渡産、鬼首産の信濃1号、キタワセの玄そばを宮城の安山岩の石臼で粗挽きし、一番外の殻だけを取り除き細打ちしております。」とあります。また、手打ち二八蕎麦御膳は、「北海道産ぼたん、山形産常陸秋そば、でわかおり、もがみわせ、宮城県産あやめの品種を外殻を取り除きマル抜きにした物を石臼挽きしたそば粉に、北海道産キタノカオリの小麦粉を二割加えて手打ちしております。」と記載されています。

このメニューを見て、期待が増してきました。このこだわりは、期待できます。そばの産地、品種、管理方法、製粉とこれらが変わるとそばが変わります。色々とソバも探されているのだろうなと思います。原産地がこれだけ広いというのは、探し続けているのだろうと思えます。また、石臼の原石の品種にもこだわりがありそうです。

私は、自家製粉手打ち十割挽きぐるみ蕎麦御膳という最も長いネーミングをお願いしました。待っている間に、店に展示されている手作り日用品を拝見しました。素朴で日々使いの日用品が並んでいます。また、レジの脇には、和菓子のテークアウトが置いてあります。くずもち、変わり種の小さなおはぎなどが。

このお店は、昼から15時まではそばを提供していますが、15時以降は、喫茶と甘味処としてお店を開いています。今日は時間が無いので、甘味処がオープンするまでは待てないので、変わりだねのおはぎ2個(1個は小豆、もう一つはクルミピーカンナッツです)を、テークアウトで予約です。実は、帰る頃には売り切れだったので、この判断は正解でした。後でいただいたのですが、クルミピーカンナッツは美味しかったです。ナッツ好きにはお薦めです??小豆は甘さを抑えた美味しいおはぎです。
帰宅後いただきました
そばが来ました。透明感があり、その中に玄ソバ挽きぐるみの黒い小さな点があり、かつ、粗挽きの粒感も兼ね備えています。大変おいしいそばです。
福島県喜多方の山都町宮古地区のそばが、玄そばをドラムで挽きぐるみして、歩留まり60%での製粉ですので、微粉を基礎に外皮が少しだけ入るので、透明感があり、小さな黒点と、コリコリとした食感があります。
これを基に考えてみました。石臼挽きですので歩留まりを下げて微粉を加えて透明感をだしています。また、コリコリ感は抑えているので微粉の量は減らしてします。挽きぐるみなので少々の小さな黒点がありという所は一緒です。ここに粗挽き粉の量を増やすというブレンド配分をしたような粉でできていると感じました。この最後の点が、大変効いていてオリジナルで美味しいそばをつくりあげています。水回しはもしかすると湯ごねかもしれないと感じました。
超お薦めのそばを提供されるお店です。


私がこれまでにこのそばは凄いなと感じた蕎麦は、平泉の地水庵さんの古典(超粗挽きそば)、前述の山都宮古地区大下さんのそばの二つです。この二つのそばは、そば粉の性質として全く反対のそば粉の性質を活かしたもので、全く異なるそばですがどちらも美味しいそばです。クリエーティブなそばという点でも大変興味深いそばです。この二つのそばに類似した美味しいそばはいくつかあります。この二つの両極端のそばに、三番目に新たに、鹿落堂さんの長いネーミングの「自家製粉手打ち十割挽きぐるみ蕎麦」が加わりました。最初の二つのそばとは趣を変えた美味しいそばを提供されます。そうです、今気づきました。「最初の二つのそばの真ん中を行くようなそば。」「二つの良いとこどりをしたそば。」とでもいうのが良いのかな???

食事を終えて階下に降りると、店主の兵頭さんが出てこられてお話することができました。大変お忙しい中厨房から出てこられてお話しさせていただきました。感謝です。

お話によると、やはり石臼はこだわられていて、このそば粉を挽くために作成依頼したものだそうです。また、こちらは私の「カン」が外れましたが、このそばは、水で打っているそうです。凄い方です。
また今度、ゆっくりお話しできそうな時間帯にうかがって、いろいろと教えていただきたいなと思いました。

2017年11月28日火曜日

そば打ち記録(71)石臼手挽自家製粉の超々粗挽き粉で生粉打ち

石臼が我が家に届き、2週間以上が経ちました。
掃除をして使い始めるまでに時間がかかってしましましたが、やっときれいに手入れして初使用を試みました。

石臼掃除は、石臼の上のうすと下のうすをつなぐ金具の錆が、石についておりこれを除去するのに苦労しました。洗剤たわしのコンビはあえなく敗退。車の汚れ落としに使われ最近はやりの水のジェット噴射器も敗退。さび落とし専用の洗剤を用いて少し取れました。少し取れる程度ですが、使用できるレベルになりました。

結構大きな石臼です(直径26cm)
ソバは、音威子府の加藤農産の新そば丸抜き(真空パック詰め)を500gだけ用いて、初めての石臼挽きに挑戦です。上石臼の口から少しずつそばを入れながら、時計の反対回しに回すと少しずつ粉が溢れてきます。上の口からたくさんのソバを入れると、挽かれる前にそばが飛び出てきます。入れるそば量と、回す回転速度で調整してそばの粉砕粒度が変わることが手に取るようにわかります。これは面白いです。500gを挽き終わり、20メッシュで篩うと、全く粉砕されていない丸抜きもありました。これをもう一度挽くという手もあるのでしょうが、このままでそばを打つことにチャレンジです。

この粗さだと、ほとんどが粒状なので水ではつなぐことが不可能と判断し、一番粉に含まれるデンプンのα化の力でつなぐことにしました。
粉500g(全く捨てていないので、無部類状態で全量を使用です)にお湯を250ml加えて、1分弱の撹拌で直ぐにくくり耳たぶの柔らかさに捏ね上げです。前回記載の山都宮古地区の大下さんのそば打ちの手法をより簡潔にした打ち方です。
このそばの塊を2つに分けて、静かにストレスをかけずに、割れないよう、回しのしでおおきな円状にのし上げました。切れることもなく、何とかつながっているという状況です。これを2回繰り返して、2つの円状にのしたものを重ねて二つ折りして切りました。


いっぽん一本は繋がっています。1本の端を持って持ち上げると途中で切れます。しかし、束のままで静かに扱えば切れずに「います」。佇んでいるようで、「います」という表現があいそうです。そのくらい切れやすいです。1本のそばを見ると、所々は白かったり緑だったり、オレンジ色だったりしてます。

これを茹でて切れなければ、蕎麦として食せるわけです。
茹でにも細心の注意を払い、全く触らずに、そのまま鍋に入れ何もせずに25秒。浮き上がり鍋の中で回り始めて9秒であげました。
切れていません。なんとか繋がっています。



これを試してもらった、娘の評価は、断然こちらのそばの方が美味しいという評価でした。そういう娘の隣の家内は、「好みだから、皆が美味しいとは思わないよ!?」と、超冷静なコメントです。でも、確かです。「食」は「嗜好」ですので。

私自身の評価は、すこしだけ粗挽き率を下げたほうが良いかなと思えました。あまりにも粗挽きなので、ソバの粒々(挽けていない塊)を感じすぎです。そばがきより粒々感を感じます。20メッシュで篩った後に残ったまだ粒状のソバをもう一度挽いた方が麺としてのそばを感じながら粗挽きの美味しさを楽しめるのかもしれないと感じています。
次回は、これらを踏まえて、再チャレンジです。

2017年7月16日日曜日

そば打ち記録(69) 超粗挽きそば 生粉打ち

7月15日(土)
2回目の粗びき粉をブレンドしたそば粉での生粉打ち挑戦です。

前日に、音威子府産キタワセ200gをすり鉢ですりました。同じそば粉の石臼微粉挽きで60メッシュ篩のそば粉を400gとすり鉢粗挽き粉200gで水を300ml用いて打ちました。
丸のしで、四角にせずにそのまま切ります。
前回同様、何とか麵がつながりました。しかし、本当に切れやすいです。茹でて、ぬめりをとるために静かに回すと、そこで切れます。結局6cmくらいになってしまいます。
平泉の地水庵さんの古典は、超粗挽きの生粉打ちそばですが、古典蕎麦の注意として、古典は切れます。と注意書きがあるほどですので、やはり、相当に切れやすいのです。
超粗挽き粉のそばが切れやすいのと同様に、更科生粉打ちそばを水で煉るそばも非常に切れやすく、そばを打つことから提供するまで細心の注意が必要であると、片倉康雄氏の著書や、大西利光氏の著書に記載があります。

地水庵さんと同じそば粉を用いて、超粗挽き粉でのそばを提供する、真狩のいし豆さん、小樽の木村さん、札幌の此の花さんともに、外一でつなぎを用いています。一方、南木曽の時香忘では超粗挽き粉にオヤマボクチを用いています。

つなぎを用いて、一定の長さのそばが良いのか、多少切れても生粉打ちそばがよいのか、まだ結論が出ていません。今度は、同じ条件で外一、生粉打ちとを同時に試していないといけません。また、湯ごねであるとどうなるのかも確認する必要があります。



2017年6月18日日曜日

そば打ち記録(68) 超粗びき粉のそば (美味しい)

2017年6月17日(土)
気温:23℃
天候:晴れ

昨夜、帰宅後に音威子府のキタワセ丸抜きをすり鉢で擂り、粗びき粉を造りました。
丸抜き粗びき粉を40%、石臼微粉挽き60%でブレンドし、生粉打ちにチャレンジです。
石臼が無いので、コーヒーミルも考えましたが、コーヒーの香りが強くこれを用いるとコーヒーの香りになってしまうので使いえないことがわかりました。それならと、すり鉢でコツコツとつぶしていくことに。

200gですが、結構時間がかかります。腕が痛くなるまでではありませんが、女性では大変かなというくらいの疲労度です。全ての粒がつぶれるようにゆっくりと潰していくしかありません。出来上がった、超粗挽きそば粉です。

すり鉢すり潰し無篩の超粗挽き粉200g、微粉粉(60メッシュ篩)300g
加水量:250ml
打ち粉:共粉
無篩粉が入るのでどの程度加水すればよいかわからず、1回目の加水を200mlにて水回し開始。
結構まとまってくるので、50ml加水しまとめに入る。
良い感じの硬さでまとまりました。
これを、2つの玉に分けて、1つずつ丸のし。丸のし後に半円で重ねました。これをそのまま切りそば麵に。
なんとか麵になっています。これを、今夜茹でていただきました。
超粗挽き粉を40%ブレンドしたそば粉
何とか茹で上がりました
麵拡大 粒ツブが見えます
超粗挽き粉を加えたそばは、そば粉そのものの味が出るので、ソバ自体が美味しくないとそば麵も美味しくなくなるそばだということがよくわかりました。
"そばがき"がそば粉そのものを味わう方法として良いと言われます。そば粉をお湯で捏ねるだけですので、そばの味をそのまま感じることができます。それに近いのが超粗挽き粉をブレンドした“そば麵”だということのようです。

そば麺は、少し切れやすいですが、ボロボロになるというほどではありません。しかし、微粉挽きの十割そばのような繋がりにはなりませんでした。水でここまでつながれば善しとするという手もあります。しかし、より良いそばにするために、もう少しつながりの良い超粗挽きそばにするための水回し方法や、捏ね方や寝かす時間等について研究したいと思います。
また、十割でなく、少量の小麦粉を用いてつなぐ、あるいは、オヤマボクチでつなぐ等を試みてみて、十割とつなぎを用いたそばとの比較検討も行っていきたいと思います。そのためにも、石臼を手に入れたいですね。すり鉢には限界がありそうです。時間がかかりすぎます・・・。。。

今回の超粗挽き粉のそばは、地水庵、いし豆、小樽のきむらでいただいた、黒松内産の奈川在来種のソバによるそばと比べると、少し穀物臭が強いそばになったと感じます。これは、ソバ自体が持つ香りの違いなのではないかと考えられます。

超粗挽き粉をブレンドしたそばは、微粉挽きのみでいただくそばとは全く別物です。これまでに味わったことが無いような美味しさです。私は、地水庵の超粗挽き粉のそばを頂きそのそばの美味しさを知ってから、それまでの2年間に渡り毎日食べてきた自身で打ったそばを、全く食べなくなったのでした。食べななったというより、食べたくなくなったと言う方が正しいのです。そのくらいの、そばの美味しさへのパラダイムシフトを起こした事件でした。今日は、そのような超粗挽きそばを、自身で打つことができた記念すべき日であります。

超粗挽き粉のそばは、その原料となるソバ自体の味や香りに左右されるようです。そうなると、一層美味しいそばを頂くには、より良いソバを求めるようにならざるを得なように思います。そして、より良いソバという植物を求めることに繋がるのではないかと思われます。
そう考えると、地水庵さんなどが言われる、そばの味を決めるのはソバそのものだというお話がスーット入ってきます。

次回は微粉挽きを加えないで、すり鉢で潰して無篩の超粗挽き粉だけで、生粉打ちにてそばにしてみようとおもいます。

2017年5月22日月曜日

そば紀行(24) いし豆 真狩村

2017年5月21日(日)北海道真狩村の「いし豆」さんへ伺いました。

今年、岩手県平泉の地水庵に伺った際にご紹介いただいたお店です。
大変混んでいる人気店です。1日40-50食で売り切れ閉店です。

”5/19(金)に発売される【ミシュランガイド北海道2017特別版】。書籍の発売に先行して5/15より掲載店が発表となりました(WEB限定)。『ビブグルマン』に掲載されているお店です。”

店主の石川様に事前に訪問を約束し、お店の終了後に伺いました。2時間ほど、色々とお話を伺うことができました。
いし豆さん、小樽のきむらさん、札幌の此花さん、これに平泉の地水庵さんが加わり、色々と研鑽されているのがよくわかりました。共同でソバの購入を行い、保存方法、製粉等を研究されています。

本日提供いただいたそばは、昨年のそば粉(黒松内落合さん栽培の奈川在来種)を脱酸素で2-4℃で保存した玄そばを、その日に用いる分だけを脱皮し、丸抜きを用いて、石臼手挽製粉と、電動石臼挽き製粉をブレンドして、十一で打ったそうです。つなぎに関しては、十一で入れた方が、生粉よりも食感が良くなるからとのことでした。
確かに、つながりや食感はよくなるのかもしれないと思います。

いただいた「もりそば」は、その食感、香り、甘みを感じる美味しいそばでした。やはり、粗引きと微粉配合がそばの香りと甘みを引き出すには必要なのだと再認識させられるそばでした。粗挽き粉のそばの香りと、微粉のそばの甘み、食感を引き出すためのつなぎの良いところをそれぞれ引き出しているのだと思います。これらの配合研究の成果がそばの美味しさを引き出していることを、地水庵さんのそば同様に感じさせるそばでした。

今日の経験で、改めて考えを巡らすと、次のような知見が得られるのではないかと思いました。
そばの香りと甘みがそばの美味しさだと思われている方は、次のようなそばを好む傾向があるのではないでしょうか。

  • 微粉引きのそば粉を用いて生粉打を行う。
  • この生粉打そばの香りと甘みを引き出すために、長茹でして甘みを引き出す。
  • そなために冷水絞めが必要になります。
  • これらは、すなわちそばの食感を捨てることになります。

この長茹でそばが美味しいという言う方がいます。比較駅年配の方に多いように思います。ここまで極端ではなくても、生粉打そばを好む方には、食感よりもそばの香りや甘み重視派が多いのではないかと思います。

一方でその全く反対で、そばの香りや甘みよりも、食感をより重視する方がいます。決してそばの香りや甘みを無視しているという訳ではありません。もし、そばの香りや甘みを全く捨てているのであれば、そばでなく他の麵で良いわけですので。どちらかというと食感重視という方は、次のような傾向があるのではないでしょうか。

  • のど越しを最重視する。
  • ツルっと感が大事なので、生粉打よりも二八そばを好む。
  • そばの香りや甘みは感じられれば良い。

この二八そばを好む方が、実は多いというが現状ではないかと思います。生粉打そばは、のど越しが物足りないと感じるわけです。比較的若い方に多いように思います。

この両方の方にアプローチして、美味しいそばを提供するには、製粉、配合が重要なポイントになるのではないかと思いました。

いし豆さんでは、そばの美味しさを左右するのは、やはりソバ自体が美味しいソバか否かによるという結論に至っているようです。ソバ農家さんが栽培する美味しいソバの持つ力を、いかに損なわないで保存し、製粉し、提供するかがそば店の役割かなというお話でした。ソバは引き算だよというお話は、なるほどと頷くお話です。

また、日本全国のお蕎麦屋さんにも大変多くの情報をお持ちで、大変勉強になりました。少しずつ美味しいそばを提供しようと頑張っているお蕎麦屋さんが増えているのだと実感します。日本特有のそば文化ですので、その文化を基礎にソバをより美味しい「食」へ導こうとするお蕎麦屋さんの頑張りに、大エールを送りたいです。しかし、これだけのそばを安価(もりそばは、他店の大盛りサイズで800円でした)で提供されています。これは、消費者にはありがたい話です。






2017年4月9日日曜日

そば打ち記録(64) 山都町宮古のそば粉 & 粗びき粉のそば打ち

4月8日(土)
気温:9度
風が強い日です。
強風により札幌新川そばの会の玄関の扉のガラスが割れてしまいました。

久しぶりに札幌新川そばの会でのそば打ちです。
来週開催の、生粉打ちそば名人大会は欠席になり、そば打ち熱が少し弱まっています。
しかし、生粉打ち名人戦の練習用のそば粉を手に入れたので、それで練習します。
加えて、先週福島県山都町宮古地区の大下さんから分けていただいた、微粉引きの歩留まり60%の玄そば挽きぐるみの粉で打ってみます。先日うかがった際に、大下さんでそば打ちを見せていただきました。湯捏ねで打ち丸のしのみで切るのが、宮古地区の山都そばです。そこで、この粉で水でそば切りにならないかにチャレンジです。

更科粉は、つなぎになる物質が少ないので麵につなぐのが大変困難です。更科粉はたんぱく質や糖タンパクによる粘性が期待できないので、水でつなぐのは難しく、湯を用いてでんぷんをアルファ化することで粘性を得てつなぐことになります。
その対極にある粗びき粉は、粒が混じるのでつながることを邪魔します。これをつなぐには、強制的につなぎを使ってつなぐ(十一で1割を小麦粉を加えてつなぐ、あるいは、長野県飯山地区の高倉蕎麦や木曽町の時香庵のオヤマボクチでつなぐ)方法、湯捏ねでデンプンをアルファ化してその粘性を用いてつなぐ(山形県の大石田次年子地区のそばの打ち方)方法、あるいは、大変むつかしいのでしょうが水で何とかつなぐ(岩手県平泉地水庵のつなぎ方)等の方法があります。
また、普通の歩留まり60%前後の丸抜き微粉引きの粉は、そば粉だけで(十割で)水を用いてしっかりとつながります。この粉に粗びき粉を少し混ぜると、急に水回しが難しくなります。加えられた粗びき粉がつながりを妨害するので、加える水の量を増やす必要があります。粗びき粉への水の浸透に時間がかかるので、丁度良いと思う水の量では、打っていく途中で水を吸い込み、水が足りていない状態になります。よって、そば粉の塊が硬くなったり、のしているとヒビが入りますし、麵が切れます。

今日打つ予定のそば粉は、生粉打ち名人戦のそば粉が、普通粉に粗びきを加えた粉です。大下さんのそば粉は、微粉の配合が多い玄そば全粒粉となるので、粉の性質が更科粉に近い粉です。そこで、この地区では、湯ごねでつないでいます。これを水でつなげれることにチャレンジです。

1回目
福島県山都町宮古地区大下さん採取在来種玄そば全粒微粉歩留まり60%粉
そば粉;1kg
水;510ml
480ml程度水を加えた段階で、丁度良いと思いくくり始めましたが、少し硬くなってきます。そこで、水を少しづつ加えて、大下さんで確認した柔らかさになるまでに、30ml水が入り、総量で510ml入りました。捏ねていくと丁度良いと思う硬さに比べて少し柔らかい感じですが、ひび割れは起きません。
捏ね終えて、丸出しの段階で、周りが少しひび割れが表れ始めます。その後、四つだしを行うと、急に麵自体がひび割れしてきます。そのままある程度の大きさに伸ばしますが、麵体の表面がひびが入っています。そこで、回しのしで捏ねながらのす方法でテリを出すようにのすと、表面のひび割れは修正されてきます。
たたんで切りますが、相当に切れやすい麵体です。
大下さんでは、湯ごねして、そばの塊を小さく分けて、それを丸のししそのまま切ります。よって、最小限の麵への負荷でそば切りとしています。それと比較して江戸蕎麦の打ち方では、麵体への伸ばす負荷がかかりすぎてしまうのだと思われます。のし方を変えることで、麵になるかはわかりませんが、今回用いた江戸蕎麦の打ち方はよくなさそうであるということは確かかなと思います。

2回目と3回目
生粉打ち名人戦の練習粉
そば粉:1kg

2回目;550ml
3回目;570ml

2回目は、粗びき粉を加えた粉での練習です。
水回しが良くないのでしょう、水が550mlしか入らず、最終的に水が足りない状態になりました。このまま打てないので、水を加えましたが、表面への水ですので、柔らかくはなりますが、ボロボロに切れる状態になりました。完全に失敗です。
3回目は、最初の加水時の水回しに気をつけ、何とか570mlの水を入れられましたが、今度は柔らかすぎて、その後の対応が難しくなりました。結構の量の打ち粉を用いましたが、麵体がうち台にくっついたり、麵同士がくっついたりという状態でした。
これも、加えた水が浸透していないので、水か過多の状態です。やはり、水回しの失敗でした。
この粉は、難しいです。4段位試験用の粉に近いようですが、扱いが非常に難しいと思います。来年の名人戦に向けて、練習していきたいと思います。
でも、こんな粉ばかり打っていると、自信がどんどんなくなっていきそうです。これにめげずに乗り越えないといけませんね!??

2017年3月28日火曜日

そば紀行(21) 地水庵 (2) 平泉


地水庵の第2弾です。

中尊寺から戻り、ふたたび地水庵さんへ伺いました。平泉訪問に関しては、一期匠Many JPNのブログに掲載しました。

そば2種はいただいたので、そばがきの善哉をいただこうと思っていました。店主から、善哉のそばがきと通常のそばがきは、使用している粉と作り方が異なるというお話を伺いました。普通のそばがきは、古代そばの粉を用いて作り、善哉のそばがきは、せいろのそば粉を用いて、もちもちフワットのそばがきに仕上げているそうです。
両者のそばがきは、食感、味、香りが異なるというのです。
これは食べ比べないわけにはいきません。フルで2つのそばがきは食べられるかどうか分からないので、少しずついただくことにしました。

最初に出されたのは、古代そばのそば粉である、超粗挽き粉をそばがきにしたものです。このそばがきの、そばの香りは凄いですし、食感はフワットしたなかにそばの粒を噛みながらいただくもので、先ほどのそば切り(麺)に比べて穀物をより強く感じる一品です。それがそば本来の持つ、美味しさなのだという事を確認しました。何もつけずに、そのまま。いただいてしまいました。
次の善哉に入るそばがきは、ふわふわです。かつ、口の中で溶けます。この溶けるそばがきと、優しく炊いた小豆が良い比率で椀に入っています。
そばがきは、こんなに変わるのだということをはじめて経験しました。
店主は、「そばがきは奥が深い。」「面白いよ。」とのことでした。たしかに、使用するそば粉の状態、そばがきの作り方で色々なそばがきが出来るかもしれません。

超粗びき粉(古典そばのそば粉)
超粗びき粉のそばがきの中
中粗びき粉のそばがきの善哉  フワトロです

その後は、様々なお話をいただきました。そばの栽培から、製粉、そばの打ち方等々、本当に幅広い専門的なお話を伺うことができました。
体調を崩してからは、栽培は自身の手を離れ、別の方にお願いしているそうです。
特別の栽培方法を農家の方を訪問してお願いして栽培収穫したものを仕入れておられます。また、仕入れた玄そばは、独自の管理方法で、保存しておられます。その後の製粉には細心の注意をしておられるようです。「もっとも重要なプロセスは製粉かもしれない。」と言われた一言が重いなと感じました。ものすごく粗びきの粉を、何も用いずに水でつないで提供する古典そばは、ものすごい工程を経て、そば切りになり、我々の前に出されているのだということ知りました。この値段では、安すぎますね。一度、このそばを試してみてください。究極の粗びきそばだと思います。
宿六さん、時香忘など、新たな取り組みで美味しいそばを提供されています。これらを総じて上回るそばではないかと思います。

そばそのものの美味しさをどのように表現するか?というところに集中している様子がうかがえ、本当に感銘しました。尽きないお話で、いつまでもお話していたかったです。


2017年3月21日火曜日

そば紀行(21) 地水庵(1) 平泉

地水庵にやっと伺うことになりました。待ちに待った地水庵です。

2016年3月に山形県の鶴岡にある「大梵字」から独立した「蕎麦きり 風土」を訪れた際に、「是非、一度伺ってみてください。」と紹介されたお店です。「そばの香りが味わえる、すごいそばを提供されています。」というお話でした。

この時から遡ること2年前の頃です。美味しいそばを求めて、そば店を巡りました。この当時の情報は、そばの有名店や老舗店の情報が主でした。しかし、なかなか、美味しいそばに出会えませんでした。殆どのそば店では、つなぎに小麦粉を加えています。また、地方のそばは別のつなぎを用いていて、これらのつなぎがそばの味を邪魔します。そこで、自身でそばを打てば美味しいそばをいただけるのではと考え、生粉でのそば打ちをはじめました。そば打ちを初めて1年半が過ぎ、現在打っている生粉打ちのそばの美味しさは理解したうえで、もっと美味しいそばがあるのではないかと考え始めます。そこで、改めて情報を集めなおします。ニューウェーブのそば店や、話題のそば店、新たな取り組みをしているそば店の情報を集めて、色々とお話を伺うために、またそば店巡りを再開します。そんな記録を本ブログの「そば紀行」へ寄稿を始めます。このような経緯で、「蕎麦きり風土」を訪れた際に、ご紹介いただいたのが「平泉の地水庵」でした。
紹介をいただいてから1年が過ぎた2017年3月に初めて伺うことになりました。これには訳があります。ご紹介いただき、直ぐに地水庵さんへ連絡しましたが、電話が通じません。何回かご連絡させていただきました。何回目でしたか?電話口に奥様の声で、応対いただいた時は、「やった」と思ったのです。しかし、奥様のお話では、「店主が体調を崩し、お休みしています。いつ開催できるかわかりません。」というお話です。これは残念でしたが、やむを得ません。

それから、1年近くが経った先週に、仙台から盛岡に行く機会がありました。ふと、地水庵さんではどうされているだろうかと思い、電話をしてみました。すると、奥様が出られて、「先日、再開しました。」とのことです。数日後に日程調整をし、伺える日を告げ今日に至ったという訳です。本当に、待ちに待った訪問です。

11時30分開店ということでしたので、10分ほど前に到着し開店を待ちました。事前に電話を入れ、超粗びきの「古典そば」と中粗びきの「せいろそば」の両方をお願いしておきました。また、お店が終わってから、お時間があれば、そばのことをご教授いただけないかという、厚かましいお願いまでしています。

11時30分を少し過ぎたころに、のれんがかかりました。店内に案内されると、その天井の太い梁に驚かされます。後で窺うと、店主自身が見つけてきて作ったそうです。
また、店内にはJAZZが剥き出しのアンプから大きな据え置きのスピーカーを通じて流れています。JAZZは自然で違和感はありません。障子には外の光と木の影が、障子の彩に加勢します。
伺った時には、6名の中年の男女のグループと私でした。





古典蕎麦が最初に出されました。超粗びきですが、そばとしてつながっています。そばのいやな臭みではなく、香りが立ちます。何もつけずにそのそばをいただきました。「愕然としました。」これまで食べたことの無い「そば切り」でした。殆どを何もつけずにいただきました。少しだけ岩塩をつけるとそばの味が増します。そば汁をつけると、そばとの調和を考えられたシンプルな味の汁でした。
そばの穀物としての風貌を感じるそばです。これは凄いそばです。どれだけの準備をして、ここに出されたのかを考えると、いただくのが申し訳ないくらいです。




次に中粗びきのせいろをいただきました。こちらも、相当な粗びき粉のそば切りです。古典そばほどの荒々しさと穀物の風貌ではありませんが、しっかりとした粗びきのそばをいただきました。これは、これまでいただいた粗びきそばを超えています。本当に美味しいです。



店内には、メニュー以外のそば情報がありませんので、多くのお客様は、ここで出されるそばがどんなそばかを知らないのだと思います。もちろん、そばですので美味しければよいのでしょうが、そばの美味しさを誤解している方も多いのも事実です。

しかし、それも否定できないのです。二八そばや、それ以上のつなぎを使用したそばを食べ、美味しいと思っておられる方は、そのようなそばしか食べたことがないので、それが基準になります。そのような方は、このそばを食べて、「短いそばだ」「つるっとしていない」「のど越しが違う」などの批判をするのかもしれません。二八そばや、それ以上につなぎの小麦粉が入ったそばが基準の方には、このそばの凄さが、わからない可能性があります。

これは、大変残念なことです。そばの美味しさを感じられないのだと思います。しかし、これは、現在の日本のそば事情ですのでやむを得ないのだと思います。そんなそば事情を変えようと頑張っておられる「地水庵」のような方も沢山居られるので、少しずつ変化があると良いなと感じました。

この後、他のお客様が来られたので、中尊寺に訪問し、その帰りにまた寄る約束をして一度店を出ました。その後のお話は、別の回にて。