札幌そば研究センター

2017年5月22日月曜日

そば紀行(24) いし豆 真狩村

2017年5月21日(日)北海道真狩村の「いし豆」さんへ伺いました。

今年、岩手県平泉の地水庵に伺った際にご紹介いただいたお店です。
大変混んでいる人気店です。1日40-50食で売り切れ閉店です。

”5/19(金)に発売される【ミシュランガイド北海道2017特別版】。書籍の発売に先行して5/15より掲載店が発表となりました(WEB限定)。『ビブグルマン』に掲載されているお店です。”

店主の石川様に事前に訪問を約束し、お店の終了後に伺いました。2時間ほど、色々とお話を伺うことができました。
いし豆さん、小樽のきむらさん、札幌の此花さん、これに平泉の地水庵さんが加わり、色々と研鑽されているのがよくわかりました。共同でソバの購入を行い、保存方法、製粉等を研究されています。

本日提供いただいたそばは、昨年のそば粉(黒松内落合さん栽培の奈川在来種)を脱酸素で2-4℃で保存した玄そばを、その日に用いる分だけを脱皮し、丸抜きを用いて、石臼手挽製粉と、電動石臼挽き製粉をブレンドして、十一で打ったそうです。つなぎに関しては、十一で入れた方が、生粉よりも食感が良くなるからとのことでした。
確かに、つながりや食感はよくなるのかもしれないと思います。

いただいた「もりそば」は、その食感、香り、甘みを感じる美味しいそばでした。やはり、粗引きと微粉配合がそばの香りと甘みを引き出すには必要なのだと再認識させられるそばでした。粗挽き粉のそばの香りと、微粉のそばの甘み、食感を引き出すためのつなぎの良いところをそれぞれ引き出しているのだと思います。これらの配合研究の成果がそばの美味しさを引き出していることを、地水庵さんのそば同様に感じさせるそばでした。

今日の経験で、改めて考えを巡らすと、次のような知見が得られるのではないかと思いました。
そばの香りと甘みがそばの美味しさだと思われている方は、次のようなそばを好む傾向があるのではないでしょうか。

  • 微粉引きのそば粉を用いて生粉打を行う。
  • この生粉打そばの香りと甘みを引き出すために、長茹でして甘みを引き出す。
  • そなために冷水絞めが必要になります。
  • これらは、すなわちそばの食感を捨てることになります。

この長茹でそばが美味しいという言う方がいます。比較駅年配の方に多いように思います。ここまで極端ではなくても、生粉打そばを好む方には、食感よりもそばの香りや甘み重視派が多いのではないかと思います。

一方でその全く反対で、そばの香りや甘みよりも、食感をより重視する方がいます。決してそばの香りや甘みを無視しているという訳ではありません。もし、そばの香りや甘みを全く捨てているのであれば、そばでなく他の麵で良いわけですので。どちらかというと食感重視という方は、次のような傾向があるのではないでしょうか。

  • のど越しを最重視する。
  • ツルっと感が大事なので、生粉打よりも二八そばを好む。
  • そばの香りや甘みは感じられれば良い。

この二八そばを好む方が、実は多いというが現状ではないかと思います。生粉打そばは、のど越しが物足りないと感じるわけです。比較的若い方に多いように思います。

この両方の方にアプローチして、美味しいそばを提供するには、製粉、配合が重要なポイントになるのではないかと思いました。

いし豆さんでは、そばの美味しさを左右するのは、やはりソバ自体が美味しいソバか否かによるという結論に至っているようです。ソバ農家さんが栽培する美味しいソバの持つ力を、いかに損なわないで保存し、製粉し、提供するかがそば店の役割かなというお話でした。ソバは引き算だよというお話は、なるほどと頷くお話です。

また、日本全国のお蕎麦屋さんにも大変多くの情報をお持ちで、大変勉強になりました。少しずつ美味しいそばを提供しようと頑張っているお蕎麦屋さんが増えているのだと実感します。日本特有のそば文化ですので、その文化を基礎にソバをより美味しい「食」へ導こうとするお蕎麦屋さんの頑張りに、大エールを送りたいです。しかし、これだけのそばを安価(もりそばは、他店の大盛りサイズで800円でした)で提供されています。これは、消費者にはありがたい話です。






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