札幌そば研究センター

2018年3月25日日曜日

そば打ち記録(75) 自家製紛粒挽きそば粉 を オヤマボクチで打つ

昨年から続いている、丸抜きを自家手引き石臼製粉し20メッシュで篩った超粗びき(粒挽きという方が合いそう)粉を、何とかして「そば切り」にという試みが続いています。

前回までは、水や湯を用いてのチャレンジを行い、湯捏ねであればなんとか麵にはなりますが、その長さは最大で25cm程度であり、折り返しで殆どが切れるという状態です。少しだけ吸い込むことができる長さですが、もう少しつながらないかという思いがあります。そこで、長野県の県北地域で昔からそばのつなぎに用いられていて、無味無臭でそばの香りや味に影響しないという謳い文句の、「オヤマボクチ」を探して取り寄せました。これを用いてそばを打つことにチャレンジです。

オヤマボクチは、キク科ヤマボクチ属の多年草でアザミ類ですが、山菜として「ヤマゴボウ」と称されています。根は漬け物にするなどして食べられています。また、氷餅の副原料として利用するほか、草餅や笹団子の原料として、ヨモギの代わりにオヤマボクチの葉を用いることもあるそうです。

信州のそばで幻のそばに 「富倉そば」があります。飯山市富倉地区に伝わる伝統のそばで、その美味しさには定評があります。富倉は、飯山と新潟県の新井を結ぶ国道202号線沿いの部落です。「富倉そば」は、ヤマゴボウ(山牛蒡)の繊維をつなぎに使った色の濃いそばで、このつなぎを使うことでそば粉の味が変わらないため十割そばのような香りと、つなぎ入りそばの喉ごしの良さを同時に味わえ、シコシコとした独特の歯触りがあります。このヤマゴボウがオヤマボクチです。

オヤマボクチの茸毛(じょうもう)と称している葉の繊維を使います。 葉の太い葉脈を抜き、手で揉んでは干しを繰り返して、残った繊維を取り出し、灰汁(アク)抜きをして乾燥させたたひとつまみをつなぎに使っています。

探し当てたオヤマボクチは、この大変な作業を終えて「すぐに使えるオヤマボクチ」として販売されています。JA長野の関連で「おたり山菜の会」という組織でオヤマボクチを栽培、処理して、そのまま加えることでオヤマボクチとして使用できるものを開発し販売してます。ここに連絡し、オヤマボクチを分けていただきました。これを用いてのチャレンジです。


オヤマボクチを用いたそば打ちの説明書き通りにやってみようということで、記載の通りに実施です。ただし、分量は説明書きの倍量で1kgのそば粉に5g(2袋)のオヤマボクチを用いました。最初にオヤマボクチを戻す湯の量も説明書きの倍量です。

実際にやってみて、この最初の量のお湯に戻されたオヤマボクチでは、粉がまとまりません。よって、追加の水を加えるのですが、湯捏ねの要領で始めたので、その後の追加の水がそば粉に入っていきません。名人が隣で曰く「湯捏ねなら湯量が少なすぎるし、普通の水回しをするのであれば、最初にまとめすぎなのでこれ以上水が入っていかない。」「どうしようもないかもね?」ということです。それでも諦められないので、少しづつ水を加えて、ゆっくり練り込み、また水を少し加えるの連続で捏ねを中心にしてやってみました。山都の宮古地区で教えていただいた要領です。

しばらくすると、そばの塊にテリが出てきて、少しづつまとまってきました。ひび割れも最小限で抑えられます。捏ねるのに必要な力は普段の3倍くらいかかります。なかなか、捏ねられないほど弾力があります。これがオヤマボクチの粘りなのでしょうね。

丸くのして、四つだしをしようと麵を麺棒に巻きました。すると、麵体がややひび割れます。そうでした、これは元々が超粗びき(粒挽き)で粒々が見えるくらい、時にはそばの丸抜きの形のまま残っているくらい粗いそば粉であることを思いまだしました。前回までの湯捏ねでは、細心の注意で扱い、丸のしや四つだしなどは以ての外で、そのままのして畳んで切るという麵でした。オヤマボクチを加えているとはいえ、粗びきの性質はそのままでした。しかし、これもオヤマボクチのなせる業なのかもしれません。そのような麵体であることを忘れさせるほど、扱い易くなっています。

これらのハードルを抜けて、本のしで一定の厚さまでのそうとしましたが、最終的に目指している厚さに至る前に抵抗にあいました。なかなかのせずに、薄くならないのです。これ以上圧を加えると、今度はそばの麵がひび割れてきて切れそうになります。薄くしたいけど、許してくれませんでした。この辺の腕が足りないのだなと反省です。

麵をたたんで切る際に、また、オヤマボクチの力を感じました。切るときに用いる圧力は、普段の3倍以上の力が必要です。また、切った断面が上下にくっつきます。説明には、打ち粉は多めにと記載があり、普段より多く加えていますが、その程度ではダメなようです。切り終えて、上下にくっついているそばをほぐして終了です。やはり、超粗びきによる切れは存在しますが、湯だけでこねたそばよりはつながっているのは明らかでした。

さて、オヤマボクチを加えたそばを茹でてみました。ゆであがった麵は、その艶があるのが特徴です。オヤマボクチは、無味無臭といいます。しかし、小麦粉をつなぎに加えたようなことはありませんが、ほんのわずかですが香りがします。気づかないこともありそうですが微量な香りがあります。また、麵は艶だけでなく、喉越しを与えてくれます。十割そばの粗びき粉で感じる喉越しより、スルッと通りますのでニ八そばのようなのど越しになります。これとは反対に、超粗びきそばを水や湯だけでつないだそばに特有の雑穀感やその香りが失われます。一言でいうと、「旨味を消してのど越し確保。」ということでしょうか。



娘は、隣で「前の方(湯ごね)が断然美味しい。」と言っています。
超粗びきそばの旨味を楽しむのであれば、オヤマボクチを用いずにという方法になりそうです。超粗びきそばを喉越しも楽しみながらということであれば、オヤマボクチの出番があります。両方別々に楽しむという方法も良いですね。

オヤマボクチでつないだそばも、汁を使用して食す、岩塩で試す、岩塩とオリーブオイルで試す、燻製塩で、ミント塩で試してみました。岩塩だけでが一番おいしかったです。汁は最後に少しだけいただきましたが、汁の味にそばの味は敵わないので、そばの味と香りが死んでしまいます。
何か、新たな汁の開発が必要です。呆然とアイデアがあるのですが、閃きを待ちます。

0 件のコメント:

コメントを投稿