札幌そば研究センター

2017年3月21日火曜日

そば紀行(21) 地水庵(1) 平泉

地水庵にやっと伺うことになりました。待ちに待った地水庵です。

2016年3月に山形県の鶴岡にある「大梵字」から独立した「蕎麦きり 風土」を訪れた際に、「是非、一度伺ってみてください。」と紹介されたお店です。「そばの香りが味わえる、すごいそばを提供されています。」というお話でした。

この時から遡ること2年前の頃です。美味しいそばを求めて、そば店を巡りました。この当時の情報は、そばの有名店や老舗店の情報が主でした。しかし、なかなか、美味しいそばに出会えませんでした。殆どのそば店では、つなぎに小麦粉を加えています。また、地方のそばは別のつなぎを用いていて、これらのつなぎがそばの味を邪魔します。そこで、自身でそばを打てば美味しいそばをいただけるのではと考え、生粉でのそば打ちをはじめました。そば打ちを初めて1年半が過ぎ、現在打っている生粉打ちのそばの美味しさは理解したうえで、もっと美味しいそばがあるのではないかと考え始めます。そこで、改めて情報を集めなおします。ニューウェーブのそば店や、話題のそば店、新たな取り組みをしているそば店の情報を集めて、色々とお話を伺うために、またそば店巡りを再開します。そんな記録を本ブログの「そば紀行」へ寄稿を始めます。このような経緯で、「蕎麦きり風土」を訪れた際に、ご紹介いただいたのが「平泉の地水庵」でした。
紹介をいただいてから1年が過ぎた2017年3月に初めて伺うことになりました。これには訳があります。ご紹介いただき、直ぐに地水庵さんへ連絡しましたが、電話が通じません。何回かご連絡させていただきました。何回目でしたか?電話口に奥様の声で、応対いただいた時は、「やった」と思ったのです。しかし、奥様のお話では、「店主が体調を崩し、お休みしています。いつ開催できるかわかりません。」というお話です。これは残念でしたが、やむを得ません。

それから、1年近くが経った先週に、仙台から盛岡に行く機会がありました。ふと、地水庵さんではどうされているだろうかと思い、電話をしてみました。すると、奥様が出られて、「先日、再開しました。」とのことです。数日後に日程調整をし、伺える日を告げ今日に至ったという訳です。本当に、待ちに待った訪問です。

11時30分開店ということでしたので、10分ほど前に到着し開店を待ちました。事前に電話を入れ、超粗びきの「古典そば」と中粗びきの「せいろそば」の両方をお願いしておきました。また、お店が終わってから、お時間があれば、そばのことをご教授いただけないかという、厚かましいお願いまでしています。

11時30分を少し過ぎたころに、のれんがかかりました。店内に案内されると、その天井の太い梁に驚かされます。後で窺うと、店主自身が見つけてきて作ったそうです。
また、店内にはJAZZが剥き出しのアンプから大きな据え置きのスピーカーを通じて流れています。JAZZは自然で違和感はありません。障子には外の光と木の影が、障子の彩に加勢します。
伺った時には、6名の中年の男女のグループと私でした。





古典蕎麦が最初に出されました。超粗びきですが、そばとしてつながっています。そばのいやな臭みではなく、香りが立ちます。何もつけずにそのそばをいただきました。「愕然としました。」これまで食べたことの無い「そば切り」でした。殆どを何もつけずにいただきました。少しだけ岩塩をつけるとそばの味が増します。そば汁をつけると、そばとの調和を考えられたシンプルな味の汁でした。
そばの穀物としての風貌を感じるそばです。これは凄いそばです。どれだけの準備をして、ここに出されたのかを考えると、いただくのが申し訳ないくらいです。




次に中粗びきのせいろをいただきました。こちらも、相当な粗びき粉のそば切りです。古典そばほどの荒々しさと穀物の風貌ではありませんが、しっかりとした粗びきのそばをいただきました。これは、これまでいただいた粗びきそばを超えています。本当に美味しいです。



店内には、メニュー以外のそば情報がありませんので、多くのお客様は、ここで出されるそばがどんなそばかを知らないのだと思います。もちろん、そばですので美味しければよいのでしょうが、そばの美味しさを誤解している方も多いのも事実です。

しかし、それも否定できないのです。二八そばや、それ以上のつなぎを使用したそばを食べ、美味しいと思っておられる方は、そのようなそばしか食べたことがないので、それが基準になります。そのような方は、このそばを食べて、「短いそばだ」「つるっとしていない」「のど越しが違う」などの批判をするのかもしれません。二八そばや、それ以上につなぎの小麦粉が入ったそばが基準の方には、このそばの凄さが、わからない可能性があります。

これは、大変残念なことです。そばの美味しさを感じられないのだと思います。しかし、これは、現在の日本のそば事情ですのでやむを得ないのだと思います。そんなそば事情を変えようと頑張っておられる「地水庵」のような方も沢山居られるので、少しずつ変化があると良いなと感じました。

この後、他のお客様が来られたので、中尊寺に訪問し、その帰りにまた寄る約束をして一度店を出ました。その後のお話は、別の回にて。


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