札幌そば研究センター

2017年3月30日木曜日

そば紀行(22) 大内宿  (ネギそば=高遠そば+ネギ)

南会津の大内宿を訪れました。

高遠そば+長ネギ=ネギそば@大内宿
という公式でしょうか?

季節がら、1/3程度のお店しか空いていませんでした。この宿場が今に残り、生活している方々がたくさん居られるのは、凄いことです。ほとんどの店舗で、お土産物屋、そば店、その他の飲食店をやられています。このお金で、大内宿の保存をしているそうです。からぶき屋根の張替えをはじめ、メンテナンスが大変な家に住まわれていますので。
残雪の大内宿
雪と空の間に茅葺
宿場景

十割蕎麦を提供をしているのは、2店舗だけでした。十一そば、あるいは、二八そばを提供している店が多かったです。大変残念ながら、十割そばを提供する2店舗がお休みでした。

東北の多くの有名なそば街道やそば産地では、ほとんどが二八そばか十一を提供しています。大内宿、山形の最上三街道、宮城の七ヶ宿、弘前へうかがいました。これらで、十割そばを提供している店は、それぞれの集落で2~3軒というところです。

空いているお店はつなぎ入りです。そこで、もりそばではなく、大内宿そばである“ネギそば”にすることにして、いくつかのお店をあたりました。

軒下でおせんべい屋さんを営んでいるお店がありました。手焼きでここで焼いているそうです。浅草なら、長蛇の列(多分)だと思いますが、ほとんどお客さんも立ち止まりません。その場で焼いているところが見えないので、これでは客は寄ってこないだろうな?と思いながら店に近づくと、中から声をかけられました。おかみさんのようです。おせんべいを勧められて試食を。
美味しいです。数種のせんべいを焼いています。「焼いておるところが見えないけど?」と聞いてみました。「暖かくなれば、ここで焼いている。」と言って、隣を指さしました。「そうか、やはり焼いているところを見せているんだよね。」と納得です。ついでに、店の見えるところに、そばのうち台があります。「ここでそばを打つのですか?」「ここで、打ってます。」「今日も、ここで打ってたんです。」

このマーケティング努力に、山形屋さんに入ることにしました。他の店では、そのような店がありませんでしたので。
山形屋
軒に並ぶせんべい

店にあがると、8名の年配の団体とご夫婦1組でした。8名の団体の方たちは、“ネギそば”です。私も汁とネギとのバランスを楽しみに同じものをお願いしました。
甘めの汁に大根おろしとおかかが合います。ネギは噛付きました。


ついでに、山形屋さんのおせんべい情報です。
超固焼きを購入しました。袋の裏の注意書きには、「歯が折れないように気を付けて。」とあります。
美味しいおせんべいでした。なかなか手に入らないレアモノかもです。1袋しか買わなかったので、残念。直ぐになくなりそうです。
歯は折れません。

2017年3月28日火曜日

そば紀行(21) 地水庵 (2) 平泉


地水庵の第2弾です。

中尊寺から戻り、ふたたび地水庵さんへ伺いました。平泉訪問に関しては、一期匠Many JPNのブログに掲載しました。

そば2種はいただいたので、そばがきの善哉をいただこうと思っていました。店主から、善哉のそばがきと通常のそばがきは、使用している粉と作り方が異なるというお話を伺いました。普通のそばがきは、古代そばの粉を用いて作り、善哉のそばがきは、せいろのそば粉を用いて、もちもちフワットのそばがきに仕上げているそうです。
両者のそばがきは、食感、味、香りが異なるというのです。
これは食べ比べないわけにはいきません。フルで2つのそばがきは食べられるかどうか分からないので、少しずついただくことにしました。

最初に出されたのは、古代そばのそば粉である、超粗挽き粉をそばがきにしたものです。このそばがきの、そばの香りは凄いですし、食感はフワットしたなかにそばの粒を噛みながらいただくもので、先ほどのそば切り(麺)に比べて穀物をより強く感じる一品です。それがそば本来の持つ、美味しさなのだという事を確認しました。何もつけずに、そのまま。いただいてしまいました。
次の善哉に入るそばがきは、ふわふわです。かつ、口の中で溶けます。この溶けるそばがきと、優しく炊いた小豆が良い比率で椀に入っています。
そばがきは、こんなに変わるのだということをはじめて経験しました。
店主は、「そばがきは奥が深い。」「面白いよ。」とのことでした。たしかに、使用するそば粉の状態、そばがきの作り方で色々なそばがきが出来るかもしれません。

超粗びき粉(古典そばのそば粉)
超粗びき粉のそばがきの中
中粗びき粉のそばがきの善哉  フワトロです

その後は、様々なお話をいただきました。そばの栽培から、製粉、そばの打ち方等々、本当に幅広い専門的なお話を伺うことができました。
体調を崩してからは、栽培は自身の手を離れ、別の方にお願いしているそうです。
特別の栽培方法を農家の方を訪問してお願いして栽培収穫したものを仕入れておられます。また、仕入れた玄そばは、独自の管理方法で、保存しておられます。その後の製粉には細心の注意をしておられるようです。「もっとも重要なプロセスは製粉かもしれない。」と言われた一言が重いなと感じました。ものすごく粗びきの粉を、何も用いずに水でつないで提供する古典そばは、ものすごい工程を経て、そば切りになり、我々の前に出されているのだということ知りました。この値段では、安すぎますね。一度、このそばを試してみてください。究極の粗びきそばだと思います。
宿六さん、時香忘など、新たな取り組みで美味しいそばを提供されています。これらを総じて上回るそばではないかと思います。

そばそのものの美味しさをどのように表現するか?というところに集中している様子がうかがえ、本当に感銘しました。尽きないお話で、いつまでもお話していたかったです。


2017年3月21日火曜日

そば紀行(21) 地水庵(1) 平泉

地水庵にやっと伺うことになりました。待ちに待った地水庵です。

2016年3月に山形県の鶴岡にある「大梵字」から独立した「蕎麦きり 風土」を訪れた際に、「是非、一度伺ってみてください。」と紹介されたお店です。「そばの香りが味わえる、すごいそばを提供されています。」というお話でした。

この時から遡ること2年前の頃です。美味しいそばを求めて、そば店を巡りました。この当時の情報は、そばの有名店や老舗店の情報が主でした。しかし、なかなか、美味しいそばに出会えませんでした。殆どのそば店では、つなぎに小麦粉を加えています。また、地方のそばは別のつなぎを用いていて、これらのつなぎがそばの味を邪魔します。そこで、自身でそばを打てば美味しいそばをいただけるのではと考え、生粉でのそば打ちをはじめました。そば打ちを初めて1年半が過ぎ、現在打っている生粉打ちのそばの美味しさは理解したうえで、もっと美味しいそばがあるのではないかと考え始めます。そこで、改めて情報を集めなおします。ニューウェーブのそば店や、話題のそば店、新たな取り組みをしているそば店の情報を集めて、色々とお話を伺うために、またそば店巡りを再開します。そんな記録を本ブログの「そば紀行」へ寄稿を始めます。このような経緯で、「蕎麦きり風土」を訪れた際に、ご紹介いただいたのが「平泉の地水庵」でした。
紹介をいただいてから1年が過ぎた2017年3月に初めて伺うことになりました。これには訳があります。ご紹介いただき、直ぐに地水庵さんへ連絡しましたが、電話が通じません。何回かご連絡させていただきました。何回目でしたか?電話口に奥様の声で、応対いただいた時は、「やった」と思ったのです。しかし、奥様のお話では、「店主が体調を崩し、お休みしています。いつ開催できるかわかりません。」というお話です。これは残念でしたが、やむを得ません。

それから、1年近くが経った先週に、仙台から盛岡に行く機会がありました。ふと、地水庵さんではどうされているだろうかと思い、電話をしてみました。すると、奥様が出られて、「先日、再開しました。」とのことです。数日後に日程調整をし、伺える日を告げ今日に至ったという訳です。本当に、待ちに待った訪問です。

11時30分開店ということでしたので、10分ほど前に到着し開店を待ちました。事前に電話を入れ、超粗びきの「古典そば」と中粗びきの「せいろそば」の両方をお願いしておきました。また、お店が終わってから、お時間があれば、そばのことをご教授いただけないかという、厚かましいお願いまでしています。

11時30分を少し過ぎたころに、のれんがかかりました。店内に案内されると、その天井の太い梁に驚かされます。後で窺うと、店主自身が見つけてきて作ったそうです。
また、店内にはJAZZが剥き出しのアンプから大きな据え置きのスピーカーを通じて流れています。JAZZは自然で違和感はありません。障子には外の光と木の影が、障子の彩に加勢します。
伺った時には、6名の中年の男女のグループと私でした。





古典蕎麦が最初に出されました。超粗びきですが、そばとしてつながっています。そばのいやな臭みではなく、香りが立ちます。何もつけずにそのそばをいただきました。「愕然としました。」これまで食べたことの無い「そば切り」でした。殆どを何もつけずにいただきました。少しだけ岩塩をつけるとそばの味が増します。そば汁をつけると、そばとの調和を考えられたシンプルな味の汁でした。
そばの穀物としての風貌を感じるそばです。これは凄いそばです。どれだけの準備をして、ここに出されたのかを考えると、いただくのが申し訳ないくらいです。




次に中粗びきのせいろをいただきました。こちらも、相当な粗びき粉のそば切りです。古典そばほどの荒々しさと穀物の風貌ではありませんが、しっかりとした粗びきのそばをいただきました。これは、これまでいただいた粗びきそばを超えています。本当に美味しいです。



店内には、メニュー以外のそば情報がありませんので、多くのお客様は、ここで出されるそばがどんなそばかを知らないのだと思います。もちろん、そばですので美味しければよいのでしょうが、そばの美味しさを誤解している方も多いのも事実です。

しかし、それも否定できないのです。二八そばや、それ以上のつなぎを使用したそばを食べ、美味しいと思っておられる方は、そのようなそばしか食べたことがないので、それが基準になります。そのような方は、このそばを食べて、「短いそばだ」「つるっとしていない」「のど越しが違う」などの批判をするのかもしれません。二八そばや、それ以上につなぎの小麦粉が入ったそばが基準の方には、このそばの凄さが、わからない可能性があります。

これは、大変残念なことです。そばの美味しさを感じられないのだと思います。しかし、これは、現在の日本のそば事情ですのでやむを得ないのだと思います。そんなそば事情を変えようと頑張っておられる「地水庵」のような方も沢山居られるので、少しずつ変化があると良いなと感じました。

この後、他のお客様が来られたので、中尊寺に訪問し、その帰りにまた寄る約束をして一度店を出ました。その後のお話は、別の回にて。


2017年3月19日日曜日

そば打ち記録(63) 札幌新川そばの会

2017年3月18日(土)
天候:晴れ
気温:5度

今日は、スポーツジムの知人に頼まれ、1kg×3回を用意し、時間があれば上砂川生粉打ち名人戦の練習という手筈です。時間は8時半から12時の3時間半でした。

頼まれたそばは、粗びき、中挽き、微粉挽きの3種で、名人戦練習粉は相当粗びき交じりです。
最初の3種は何とか打つことができました。30メッシュ篩の粗びき粉は少し短めでしたが、特に切れるということはないと思います。他の2種は問題なく打つことができました。
お二人に差し上げたので、どのそばを好むかというフィードバックが楽しみです。

最後にチャレンジした名人戦練習粉の結果は散々でした。前情報で、1kgに対して570mlの水が入るといわれていたのですが、そこまで入れると柔らかすぎで扱いが困難でした。2-30ml少な目で十分つながるのではないかと思われました。
名人戦が4月16日(日)ですが、それまでに練習する機会があまりないのが問題です。
新川そばの会は土曜日だけですので、この後名人戦まで行けそうにありません。自宅での練習は困難ですので、これは困った状況です。水回しだけでも数回の練習機会を得たいので、なんとか機会を見つけるようにして臨みたいと思います。日程調整がむつかしそうです。



2017年3月6日月曜日

そば打ち記録(62) 2017年初打ち

2017年の初打ちは、昨年と比べて1ケ月も遅れてしまいました。

初打ち
2月4日(土)
1kg×2回
粉:練習粉で、購入日時等不明
生粉打ち

2月11日(土)
1kg×3回
粉:練習粉で、購入日時等不明
生粉打ち

2月25日(土)
1kg×3回
粉:練習粉で、購入日時等不明
生粉打ち

3月4日(土)
1kg×3回
粉:練習粉で、購入日時等不明
生粉打ち

2017年お正月から、自宅で全くそばを食していません。昨年は、そばを食べない日がなかったのですが・・。
理由は特になく、まだ、お正月のお餅が余っているというのが本当のところです。今年になって、3回そば打ちを行い、その後に試食をしていますが、あまり美味しいと思えないという、そば贅沢病に落ちているようです。

この数年で、色々なそばをいただきました。丸抜きの微粉挽きのそば、丸抜きの粗びきのそば、玄そばを挽いたそば、更科十割そば、変わりそば、各地の代表的なそば・・・。
どうも、丸抜きの粗びきのそばが美味しいと思えてきています。粗びきそばは、現在のソバの香りや味の低下を補えると思えます。微粉挽きで歩留まり50から60のそばは、香りや味で明らかに落ちると思います。数年前のソバの香りや味であれば、それも有りと思えますが、現在採取されているソバは、そこまで香りや味が濃くないと思えます。それを補うためには、甘皮まで加える必要があると思えてきています。

加えて、粗びきのそばは、更科そばの歯ざわりであるコリコリ感を併せ持たせることが可能です。そのような粗びきのそばのほうが、楽しめますし、実際に美味しいと感じるようになってきました。まだ、途中の段階ですが、少しずつ美味しいと思えるそばの像が見え始めてきているように感じます。

超粗びきで、そばの香りと味の邪魔をしないで、麵体をつなぐ事が出来る方法を、今年は研究したいと思います。湯捏ねは昨年からチャレンジしていますが、どうしても加水量が増えますし、一度そばのでんぷんをアルファ化してしまうので、茹で時点では2度茹での状況になります。この方法以外に、現在美味しいと思える粗びきのそば店では、微量のつなぎ(小麦粉)を入れて麵をつないでいます。湯、小麦粉を用いないで、超粗びき粉をつなぐ方法に、オヤマボクチなどの植物を用いる方法がありますので、この植物でのつなぎがそばの香りや味にどのような影響を与えるのかを確認してみたいと思います。
2017年の課題として、これらを少しずつ明らかにしていきたいと思います。

そば打ちに関しては、基本に戻ります。一つ一つの作業の意味を再確認し、確実に行えるような練習に切り替えます。上記のように、練習機会を増やしていきたいと思います。