札幌そば研究センター

2016年4月29日金曜日

そば打ち記録(43) 全麺協2段位認定試験

2016年4月29日(昭和の日)
天候:雨
気温:7度

石狩市にて全麺協素人そば打ち段位認定技能試験が開催されました。
昨年の同日に、同会場で初段試験に合格し、丁度365日です。

1年間は毎年だんだん短く感じられるようになってきていますが、ことそばに関しては、同じ1年が長かったように感じます。この1年では、このブログを始めたのもそのころですし、その間にそばに関して得たことは、可能な限りこのブログに綴ってきました。昨年の初段試験のことは、このブログの18項に記載されていますので、そこから数えても長かったという印象です。

この1年間に、そばに関する知識習得、そばを打つということ、大会等へ参加し色々と見て学ぶ等、そばに関する勉強をしてきました。その成果が出るはずの2段位試験でした。結果は合格と言う嬉しい結果ではありましたが、反省点が多いものになりました。水回しの失敗とそのために生じた柔らかい麺体への対処を間違ったことにより、四つだし後に麺を破いてしまいました(??よく合格しました??)。そのため、麺を処理しつなげるのに時間を要してしまい、その後の流れが大変悪くなり、最後まで取り戻せませんでした。失敗はあるので、それはやむを得ないとしても、失敗で失った時間との戦いになり、時間内に間に合わせるために、のし以降の過程で、十分な対応ができなくなってしまったことが悔やまれます。

終わったことは、どうにもしょうがないので、これから先のことを考えることにします。
美味しいそばを打てるようになることが第一ですが、きれいに打てて美味しいそばならより善いわけで、誰が見ても素敵で、きれいで、華があって、どのような条件下でもいつでも美味しいそばが打てれば益々善いわけです。そんなそばが打てるようになることを最初に目指します。その後は、また色々な目標ができると思います。

明日からは、そばにまつわる様々なことの中で、『そばを打つ』ことに少し集中したいと思います。そのために、色々な大会に参加することにします。大会参加に向けて練習機会を増やしていこうと思っています。そうでもして尻を叩かないと、前に進みませんので。

試験会場風景
(大会事務局の皆様、準備ありがとうございます!!)
切ぞろえが甘甘でした(泣き)
参加者一覧
(初段が昨年より少なかったです)





2016年4月24日日曜日

そば打ち記録(42) 札幌新川そばの会 / 2段位試験 特訓

2016年4月23日(土)

天候:曇り
気温:16℃

来週の金曜日(4/29 ゴールデンウィーク初日)に、石狩市で開催される、全麺協の2段位試験に挑戦します。
段位試験があるということで、本日、札幌新川そばの会のK名人が、付きっきりで2回のそば打ちにて、諸処ご指導いただきました。

私がこの2年間で身につけた、良くない癖を指摘いただき、修正点が明らかになりました。
次に、そば打ちの手順に沿って、本日ご指導いただいた内容を記載します。多分、そば打ちを始めた方には、参考になると思います。

【篩】

  1. そば粉に繋ぎを加えて篩うほうが効率的


【水回し】

  1. 水を出す手(粉に圧をかけて手のひらも使い、押し込みながら水回しを行う)で水回しを行う
  2. 加水量は、  300→130→様子を見て
  3. 指の粉を落とす→木鉢の粉落とし→加水というように決めておく

【こね】

  1. 肘を曲げない(肘が曲がらると力が伝わらない)
  2. 全体重が麺にかかるように体がへの字になって、その先端で麺を押し込むようにこねる
  3. 両手の親指の付け根を揃えて指先は軽く伸ばして押し込む
  4. 前に押し込むと、手前の麺体がくるっと上がってくる
  5. 型とり→1  2  3  のリズムで
  6. 繋ぎありの玉は、しっかり柔らかくなるまでこねる
  7. 菊練は、右手小指側の手のひらで麺を押し込み、麺を左に回して、前回の右側を押し込む→これを繰り返す
  8. くくりは、麺体を作用どちらかに回転させながら行う
  9. くくりの最後は、右手を麺の底の上側に置き、左手は麺体の下を抑えるようにして、回転させることでテリをだす(湿式粉砕を利用する)

【地のし】

  1. 丸を常に意識
  2. 手のひらの親指と小指の内側の丘で押す
  3. 親指の付けねより手前のみで前に押す(麺から見ると浅い部分のみであり、そんなに深く圧をかけるわけではない)
  4. リズムは、1 2 3→回す  左回り →1回転
  5. 真ん中の山のみを潰す → 両手で平らにするように圧をかけながら麺体を回しながら平らにする 
  6. 麺体の回りを押さえながら回転させ丸く整える→これで終了

【丸のし】
*丸のし前処理

  1. 最初は、平らにすることが目的→手を外から内に動かしながら平らにする

*丸のし①

  1. 手を麺の外の麺棒に置き1*2*3とのす→回す→123の繰り返し
  2. 麺棒を前に送る時に、無圧→圧→無圧、麺棒を手前に戻す時は圧をかけずに戻す→また前に →12回位で1周位したら終了
  3. 目線は左のカーブを見て丸くなっているかを確認
  4. 回す角度は、左手の平だけを麺体に付け、左45度から少し下にずらす(感覚では、5度位=時計の1針→12回転で1周)

*丸のし②

  1. 手を麺棒のまん中に置き前にのす→のしながらを広げ下に戻しながら手を最初の位置に戻す
  2. タイミングは、1*2*3、圧は無圧→圧→手が広がり始めて無圧の繰り返し
  3. ①同様に、左手の平のみを麺に付けて下に動かす 左45度から少しだけ(約5度)下に動かす
  4. その他は丸のし①と同様


【四つだし】

  1. 真ん中に手を置き、前後に回転(決して強く押さえない、回転させるだけ)させながら少しずつ巻いていく→2回目も同様→3回目は、外から内に少しずつ回転させながら前に巻いていく→この際に、均等になるようにと言うことを意識して手を置くところを考える
  2. 見えている麺体の角度は、2回目と2回目が60度、3回目110度、最後は90度 ←これは私の追記
  3. ↗に角を合わせ開く


【肉分け】

  1. 肉分けし幅だし→この時は、麺棒を上下に動かし、大きく麺棒を動かす
  2. 縦横を入れ替えて肉分け→四角を意識するがザックリで良い


【本のし】

  1. 手前を巻き先の端を整える→上下を入れ替え→したから30cmを仕上げる→仕上げたところにのし棒を置き、そこまで卷き→手前に麺を引き下げ、そこで少し手前に開く→のし棒のある位置から先を次にのす→左と右の線が真っ直ぐになるように、のし棒の角度と手の動きを考えながらのす
  2. 麺の真ん中をのし過ぎるので、注意が必要
  3. 厚みを確認しながらのし進む 厚みの確認は、両手を麺の端に置き、左右同時に確認すると分かりやすい


【たたみ】

  1. 打粉は均等に →一筆書きで余分な打粉を外に出すことはダメとは言っていない
  2. 2回目の畳の際に、麺の右下に右手の親指が下に入るようにし、同時に麺の左の下に親指が入るように構えて、同時に麺を返す、その後左から右に向かい右手が右上の角に届くように扇のように麺を動かし、角と角を合わせる→その後、麺を手前に近づける→3回目のたたみは、右下に右手親指が下になるように入れ、左手親指が左下に入るように構え、少しだけ上に返す、そのご2回目同様に右角が重なるようにする→下の丸みは手でしっかりと浮かないように整える


【切り】

  1. 顎を引いて、背筋を伸ばして切る
  2. 最初に麺の端に包丁をあて、包丁で麺に圧をかけると切り口が整ってくる→最初のヒトきりをゴミにしなくてよくなる
  3. 切は、駒板の端に包丁が付いた状態で真っ直ぐ下前に包丁を動かして切る→その後包丁を左に傾けて麺幅をとる→そのまま駒板に合わせるよう包丁を上げると、包丁が麺を外れ駒板にぶつかる→次の切にはいる
  4. 切り落としながら左に傾ける癖があるので、駒板にくっついていること、駒板に包丁が付いたまま下に切り終えていることを確認しながら切る→そのためには、駒板と包丁の当たるところ(包丁の左の面)を見ながら切るようにすると良い
  5. 最期の方で、駒板が傾くが、出来るだけ我慢しながら駒板を真っ直ぐに保って切り進む→そのためには、左手で駒板を抑えるところを駒板の端(包丁に近いところ)に移動させる
  6. 最期の切のところは、駒板が傾くので、その傾きに合わせて(最期まで包丁と駒板がピッタリ付いている状態)切り進む
  7. 切り数は最後まで一定に保つこと(30なら30)→最後のところで、切り巾を無視して切り過ぎる癖があるので注意する
  8. 切り終えて、余分な打粉を落とす際、包丁で切った麺を右に移動させるが、その位置は最初の位置と同じところで作業する
  9. 麺を取り上げた後のまな板は粉で汚れているので、包丁でまな板の外にはきだす
  10. 目開きは、手前から包丁を40度くらいの角度で麺の下に入れて手前に引く
  11. 麺は切り終えた状態が保てるように扱う(両端が揃うように)
  12. 左手から右手に持ち替えるさいに、麺の下が揃うように調整してから右手で掴む


【木舟へ置く】

  1. 真っ直ぐになるようにならべて置く
  2. 木舟の手前の壁に麺の丸い方を合わせて置いたら、全てそうする→最後に揺らして動かし真ん中に移動させることも可

以上でした。

段位試験まで残り6日です。これらの教えを再確認して、試験に臨みたいと思いますが、練習機会が前日しかないので、前日に再確認です。
まだ、時間制限化で終えることができるかを確認していないのでこちらも前日の1回練習でチャレンジです。ふーーウ、すこし心配であります。

2016年4月18日月曜日

お手伝い記録(1) 第8回北海道素人そば生粉打ち名人大会 と 第2回北海道シニア素人そば生粉打ち名人大会

2016年4月16日(土)第2回北海道シニア素人そば生粉打ち名人大会
2016年4月17日(日)第8回北海道素人そば生粉打ち名人大会

  • 場所;北海道上砂川町体体育センター


両日、名人大会のお手伝いに行ってきました。
生粉打ちの大会が少ない中で、今年で8回目となる名人戦です。生粉打ちを標榜している札幌新川そばの会所属ですし、かつ、もう一つの所属先である北海道空知上砂川手打ちそば愛好会主催ですので、お手伝いを言い訳に見学に(参加でないのが寂しですが)伺いました。

初日は、シニア名人戦でした。シニアとは65歳以上と伺いました。シニア大会参加者の方は翌日の名人戦にも多くの方が参加されていました。シニア名人戦は、4組38名の参加で行われました。
名人には、馬追手打ちそばの会会長の中野様が選ばれました。

当日の夕方から上砂川のパン家の湯で懇親会が開催されました。ここにも大勢の方が参加され、お酒や蕎麦談義で一夜を過ごしました。私は、一度札幌に戻る用事があったので、お泊りではありませんでしたが、皆さん相当飲まれていました。明日の、名人戦は大丈夫なの?と他人事ながら少し心配を残して、パン家の湯を後にしました。

翌日の名人戦は、5組78名が参加されました。北海道内の主だったそば打ちの会から、腕優れが集まりました。その面々は、北海道の素人そば打ちを引っ張って来られた方々や、そのお弟子さんと孫弟子さん達です。皆さんお互いに顔見知りで、というより大の仲良しで、実際に麺を打っている時以外、和気あいあいでした。

シニア名人戦、名人戦共に、1kgを40分で打つというルールです。相当に難しい粉を用意したとの開催者側の意に反して、参加者の方々は皆さんしっかり水まわしを行い、そばに仕立てられていました。流石です。

名人には、全十勝手打ち蕎麦推進協議会の池 功司様が選ばれました。準名人になられた方2名の方も全十勝手打ち蕎麦推進協議会の方々でした。全十勝が名人、準名人を独占しました。

唐橋審査員長からは、次の内容のコメントがありました。
・皆さんのそば打ちは、大変丁寧でした。反対に、時間がかかっています。
・水回しの際の加水では、堅い方が多かった。くくる際に半分練って、固さを確認したら良いとのアドバイスがありました。
・生粉打ちでも、しっかり練ると、そばが割れなくなるというアドバイスがありました。
・角だしを行う際には  角を出したいところにしっかり手を置いてください。手がぶれていますよと言うアドバイスがありました。
・のしでは、まん中が薄く、回りが厚い麺体が多かった。このままだと、蕎麦の先が太いそばに成ってしまので注意してくださいとのコメントでした。
・屑が多い方が多いので、屑をできるだけ出さないような工夫が要りますというご指摘でした。
・後片付けが雑な方も多く見られた。篩までしっかり清掃してほしいとの強い意志を感じるコメントでした。
・最後に、常に皆さんの持つ五感を研ぎ澄ましてそばを打ってほしいとの総合コメントでしめられました。

私のお手伝い内容は、参加者が使われるバケツの水を取り換える作業でしたので、特段、問題もなく終了でした。その分、参加者の皆さんのそば打ちをじっくり観察させていただきました。
水回しでは、うち回し、外まわしの違いがありますが、左右交互の手回しが多かったようです。
くくりの前段階では、コロコロの玉状まで回す方は殆んどなく、途中でくくる方が多かったようです。
地のしから丸出しに、時間をかけて慎重に行われている方が目立ちました。

今回参加して感じたことは、参加されている皆さんの向上心に感心したことです。すでに高いレベルのそば打ちができる方々が参加し、より高いレベルを目指して練習して参加されていました。相当の努力の上ですので、非常に高いレベルでの戦いになっていました。機会を捉えて、積極的に参加することが、自然と自身のスキルアップにつながると感じました。まだ、私自身は参加して云々というレベルではありませんが、是非来年はチャレンジしようと思います。本大会だけでなく、その他にも色々な大会があるので、積極的に参加して、参加者の皆さんからのフィードバックをいただきながら成長する機会を作っていきたいと思います。


開会式
審査
表彰式

2016年4月9日土曜日

そば打ち記録(41) 札幌新川そばの会

2016年4月9日(土)

天候:曇り
気温:10℃

今朝、8時15分頃会の駐車場に着きました。今日も3番目に到着でしたので駐車場は空いていました。

今日も、1.0kgを2回打とうと思います。最初は前回失敗した粉への挑戦で、2回目は段位認定試験対策のために時間を測りながら打つことにします。

最初にそば粉へのチャレンジですが、山形県の次年子で仕入れたドラム粗挽き粉のお蕎麦屋さんの粉で、お蕎麦屋さんの店主は、湯ごねでないとつながらないと言われていた粉です。前回は全くつながらず大失敗でした。今回は湯ごねでやってい見ようとおもっていましたが、ギリギリでもう一度水でつないでみたくなり、水での再挑戦にチャレンジしました。

<1回目>
そば粉:山形県大石田町来迎寺そば
品種:来迎寺在来種
製粉:3月14日 ドラム挽き
重量:1.0kg
加水量(率):最初540ml

<2回目>
そば粉:札幌新川そばの会のそば
品種:キタワセ類似種
製粉:2016年4月石臼挽き
重量:1.0kg
加水量(率):460ml(46.0%)

2回目を先に記載します。時間は、49分でした。前回同様にあと10分短縮が必要です。相当ゆっくりやった割にはさほど時間がかかっていませんでした。今日は、試験用に少し水を多めに入れてみました。しかし、少し緩いというところの意識が途中で抜けました。特に四つ出しで大失敗です。少し力を加えてしまったので、歪な四角になってしまいました。その修正に時間を要したので、その時間が無駄になりました。修正が必要な事態への対処は、少しずつ上手になっていますが、そうならないようにしなければいけません。
四つ出し時の力加減がまだまだです、なかなな真四角で四つ出しが仕上がりません。目に見えている角度で調整するという記載もありますが、なかなかどうしてその通りにやってみても、真四角な仕上がりにはなりません。丸出しがしっかりできているという前提ですが、段位試験までに練習が必要です。

2回目の来迎寺在来種のドラム粗挽きの水でのつなぎの結論は、今回も大失敗でした。前回よりも慎重に水を加えて行きました。ここで良いと括りましたが、やはりひびがでます。これを細かくし再度水を加えました。この水はそばには回らずに、カチカチのそばの塊が、トロトロのそばの塊に大変身です。という前回と全く同様の経緯でした。前回の失敗を踏まえての再挑戦でしたが、全く同様の結果と言うのは成長が無いということですね。
何処が問題なのかがまだよく理解できないので対処方法が不明です。今後も再挑戦してみたい粉ですが、残念ながらもう手元にないので、少し検討します。
大失敗2回目の来迎寺在来種
失敗後の無残な姿デス!!
【追記】
2016年4月10日(日)
本日、朝からジムに行き夕方の帰宅後に、無残なそば粉の塊を何とかそばにしようと試みました。
小麦粉を加えて、グルテンの力を借りて再度挑戦しましたが、全く手に負えず麺にはなりませんでした。水が粉から噴き出してくるような状態を回避しようとすると麺体が硬くて手にを得ません。これを数回繰り返すことになり、最後は残念ながら麺にするのは諦めて「そばがき」でいただくことに。

2016年4月5日火曜日

そばとわたし(9) でんぷんとたんぱく (そば打ち語録)

でんぷんとたんぱく 

 今日は、久々のそば打ちで札幌新川そばの会に伺いました。2週間ほど空いたので、久しぶりという感じです。札幌新川そばの会では、1月を除く月の第2から第4土曜日に開催されます。よって、前月の最終回から翌月の初回の間は2週間空きます。
 今日も、札幌新川そばの会のそば粉を篩にかけ、いざ水回しと言うときでした。


 会長曰く、
 「二八はグルテン、生粉打ちは別のタンパクなんだよね。」

 私曰く、
 「は??」


 会長曰く、
 「そばという植物のでんぷんとたんぱくの組成を知らないと、
  良い蕎麦は打てないよ。」

 私曰く、
 「でんぷんとたんぱくですか?」
 「たしか、そばはグルテンをふくまないですよね?」



そばとうどんの違いはと言われると、そばという植物と小麦という植物からつくられるということで、そもそも素材が違うということになる。この二つの植物の違いは何かというと、ソバと小麦に含まれる組成が異なるという、当たり前の結論になる。では、その組成のどこに違いがある故に、蕎麦麺と饂飩麺に違いが生じるのかということには、異なるという認識はあるものの、その具体的な違いには思い及ばなかったというのがこれまでの私であった。この件が、蕎麦と饂飩、ソバという植物と小麦という植物の違いについて考えるきっかけであった。
 

  ソバと小麦の玄穀同士をビタミン量で比較すると、玄そばと小麦の玄穀では、大きな違いはありません。小麦の玄穀には穀物としては比較的多くのビタミンが含まれます。しかし、その大部分は皮や胚芽の部分に偏在しており、胚乳部の中心に向かうほど少なくなります。小麦胚芽は栄養価が高く、これを基にしてビタミンEを製造されるほどですが、それらの栄養素は胚乳の粉である小麦粉には含まれません。

胚乳の中心部にはでんぷんが多く含まれ、粒の周辺部に近づくにつれて他の栄養成分が多くなるのは小麦ばかりでなく、ソバや米など穀類全般に共通した性質です。しかし、小麦とソバでは、使用する部分が大きく異なります。小麦とソバは製粉され、お互いに最も良いとされる紛体を取り出して使用されます。この過程で含まれるビタミン等の含有が異なってきます。これは、ビタミンだけでなく部位に局在する物質において同様なことが起こります。

では最初に、小麦について考えてみます。小麦粉にはいくつかの種類があり、それぞれ栄養成分の組成も違います。
小麦粉は、次の二つの組み合わせで区分され、「強力一等粉」、「薄力三等粉」という呼び方になります。
A)種類別分類:強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム・セモリナ
B)等級別分類:特等粉、一等粉、二等粉、三等粉、末粉
 強力粉・薄力粉などの種類別分類は、含まれているたんぱく質の量によって決まります。
  たんぱく量が、強力粉が12.514%、準強力粉が1012.5%、中力粉が810%、薄力粉が68%です。

 一方、等級別分類は、カリウムやリン、カルシウムなどの灰分(ミネラル)の含有量によって決まります。これらミネラルは、小麦粒の皮および粒の周辺部に集中し、胚乳部の中心にいくほど少なくなります。灰分が多いということは、胚乳の周辺部まで挽き込んだことになりますから、でんぷんの純度の高い中心部を粉にした製品に比べてグレードが劣る、という意味になります。沢山ミネラルを含むことは小麦粉にとってはグレードが下がるということです。このため、小麦粉の製粉の狙いは、胚乳部だけをいかに純粋に粉にするかにかかってきます。

小麦粉の性質は、原料小麦の品種や産地、作柄などによっても左右されます。よって、たんぱく質と灰分の量の違いだけでは最終的な判断ができませんので注意が必要です。
小麦粉を使用して饂飩を作る際にどのような小麦粉が良いのでしょうか。作ろうとするうどんによっても条件が変わってくるため一概にはいえませんが、一般に、うどん作りに通した小麦粉は、たんぱく質含有量が810%の範囲内で、グルテンの性質があまり硬すぎず、適度な柔らかさと切れにくい伸展性を持つもの、とされています。先の分類によれば、中力粉の一~二等粉が向いているということでしょうか。

そば粉の製粉のポイントは、でんぷんを中心成分とする胚乳部に、胚芽や甘皮部分、場合によっては殻の一部分までを、どれくらいの割合で配合するかということです。その配合比率によってそば粉の風味や色が決まり、挽きぐるみ、一番粉、二番粉、三番粉と分類されます。
 そば粉のたんぱく質含有量は、一番粉(内層粉)が6%、二番粉(中層粉)が10.2%、三番粉(外層粉)は15%です。この数字は、小麦粉の種類別分類(強力粉・準強力粉、中力粉、薄力粉)とほぼ対応していますが、たんぱく質の栄養価には大きな違いがあります。

たんぱく質の栄養価は、必須アミノ酸の種類と量が、人体の要求するアミノ酸組成に近いかどうかで評価されます。人間の体は、このアミノ酸バランスがとれていないと、食品中のたんぱく質を効率よく吸収・活用することができません。
 そば粉のたんぱく質のアミノ酸組成の最大の特徴は、穀類のたんぱく質では不足しがちな必須アミノ酸であるリジンの含有量が多いことです。「日本食品アミノ酸組成表(日本食品標準成分表2015年版(七訂) アミノ酸成分表編)」によれば、そば粉(挽きぐるみ)のリジン含量は100g当たり700mgです。それに対して、小麦粉(中力一等粉)は220mg、強力一等粉でも270mgしかありません。
 一般に、たんぱく質の栄養価は、アミノ酸スコアで表わされますが、小麦粉の中でも最も高い薄力一等粉で44(中力一等粉は41)、白米が65に対して、そば粉は二番粉が90、挽きぐるみでは92にもなります。そば粉のたんぱく質は、大豆の86をも上回る優れたアミノ酸バランスを持っています。しかも、リジンの含有量は、そば粉の品質にほとんど影響されません。
 
話しを小麦とソバの製粉の違いに戻します。そば粉と小麦粉の製粉目的の違いを栄養面から見れば、そば粉の製粉は小麦粉の場合に比べて、栄養素の豊富な部分(胚芽や種皮部分)を製粉工程で失うことが少ないということになります。もちろん、ソバと小麦は別種の穀物であり、製粉する前の玄穀の段階での成分組成に違いがありますが、これに加えて製粉目的の違いがさらに、両者の栄養成分の違いを増幅しています。
 
  そば粉と小麦粉では、たんぱく質の栄養価だけでなく、たんぱく質の性質も違います。小麦粉は水を加えてこねると、粘りと弾力性のある塊にまとまります。この生地を多量の水にさらしてでんぷん粒やその他の水に溶ける成分を洗い流すと、餅のように粘弾性の強い塊状のものが残ります。これがグルテンで、これを食用に加工したものが生麩です。
生麩がグルテンの塊だったのですね。

現在は、グルテンフリーという食文化も出てきています。特にアメリカではこの食文化が進んでいるようです。グルテンフリー文化の発祥は、小麦等に含まれるグルテンのアレルギー反応が話題になったことです。その後、ダイエットとの関連まで話題が広がっています。ソバアレルギーの方も居られるので、グルテンもソバもアレルギーを引き起こす抗原になるということで、この点では両者は同様に注意をする必要があります。グルテンフリーとダイエットに関する科学的根拠が何処まで正しいのかについては、皆さまにお任せしますので、ここでは踏み込みません。ただ、生麩はグルテンフリーの方には大敵ですね。

一方、そば粉には小麦粉のようなグルテンはありません。そば粉の水溶性たんぱく質は水に溶けると粘りを生じるので、その力だけでそば粉をつなぐことができます。ただし、グルテンの綱目構造のような強い麺帯形成力にはなりません。生粉打ちがつながりにくいと言われる原点です。

  そば粉がグルテンのような網目構造を構成する物質が無くてもつながる理由は、上述のような水溶性たんぱく質による粘性の他に、水溶性の多糖による粘性があると言われています(1991 大日方洋他)。この両者による粘性がそば粉をつなげる力になります。ただし、両者ともに緩い結合を引き起こすだけですので、その結合力は饂飩のようではありません。
 
  この緩やかな結合は、その食感にも影響していると筆者は考えています。饂飩と生粉打ちそばの切れやすさは、口に含んだ際の食感に直結します。グルテンを含んだ食物は、噛むという作業をすることでその旨味が表出します。饂飩は噛まないと、小麦の美味しさを感じません。讃岐饂飩は良く噛んで小麦の旨味を感じて食します。また、そうめんは噛まずにグルテンが繋いだ小麦をスルーッと喉に通すことで、喉越し感覚を楽しみます。生粉打ちの蕎麦は、歯を用いて良く噛まなくても旨味を感じます。口に放り込むと勝手に麺が切れます。その際にそばの旨味を感じます。生粉打ちでなく、つなぎに小麦を使用した蕎麦麺は勝手に切れないので、讃岐饂飩のように噛んで楽しむか、そうめんのように喉越しだけを楽しむかということになります。ただし、グルテンを含んだ麺ののど越しと、グルテンを含まない生粉打ち蕎麦の喉越しは異なります。生粉打ちが良いのか、二八が良いのかという議論はまた別の機会に任せ、ここではこれ以上触れないことにします。しかし、この議論において、グルテンの存在とその食感への影響は、重要なポイントになります。
 
ミネラルは、小麦粉にはほとんど含まれていません。これは、小麦粉だけでなく米などの穀類にはミネラルはあまり含まれていません。ミネラルが豊富なそば粉は、穀物中の例外です。

 さてさて、でんぷんとたんぱくを理解し、その組成を考慮しながらそばを打つというのは、この事件後1年ほど経過してからだったと思います。
そば粉の成分は分からないけど、この日のそばも無事につながり、その晩から数日は、美味しいそばをいただきました。


(参考文献)
ソバと小麦の成分日本食品標準成分表2015年版(七訂)参照
(文科省ホームページ;http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365297.htm)  

日本食品標準成分表2015年版(七訂) アミノ酸成分表編
(文科省ホームページ;http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365450.htm


1991 大日方洋他 そば粉に含まれる水溶性粘質物の特性について 日本食品工業学会誌 Vol. 38 (1991) No. 5 P 391-397