札幌そば研究センター

2017年5月28日日曜日

そば紀行(25)手打ち蕎麦 きむら 小樽

小樽市の「手打ち蕎麦 きむら」さんへ伺いました。
札幌から向かうと小樽の港を過ぎ、「オタモイ」という海岸を示す方の住宅街の中にあります。住宅街の中の一軒家で、お店の向かいに駐車場があります。
「きむらさん」も、岩手県平泉の地水庵さんからご紹介いただいた、美味しいそばを提供してくださるお店です。
また、先日発表のミシュランの『ビブグルマン』に掲載されたお店です。

伺う数日前に電話で連絡させていただき、今日の午後のお店の終わりころにということで、14時に伺いました。

お店の中に入ると正面にそばの打ち代があります。打ち代の上には大きくて素敵なそば打ちの鉢が置いてあります。あまり見かけない素敵な鉢です。その隣に大きな石臼が鎮座しているのが見えます。店内は、アンティークで統一されています。古いタンスや鉄器があり、古い掛け時計がチクタクと動いています。また、電動石臼も場所を取って、その中に存在しており、やはり、おそば屋さんだと気づかせます。

そばは、やはり黒松内の落合さんの奈川在来種を用いています。手回しの石臼で粗挽き粉を挽き、電動石臼機で微粉粉を挽いてブレンドしているそうです。先日訪問した真狩の「いし豆」さんと同様の方法をとられているそうです。

そばがきは、手引きの石臼挽きの粗びき粉のみを用いているそうです。麵は、粗びき粉と微粉挽き粉をブレンドし、外一でつないでそばにしているそうです。
今日は、最初に「そばがき」をお願いし、その後に「せいろ」をお願いしました。実は、これでは終わらず、最後に温かい「かしわ蕎麦」もお願いし3食でした。食べすぎです。

そばがきは、ほんのり焼き目つきで大変そばを感じさせるそばがきです。何もつけずにいただきました。そばの香りと甘みが美味しいです。せいろは、細めの麵でしっかりとした、大変美味しいそばでした。量は普通のそばより少し多めです。そば湯は、茹で汁ではなくそば湯用に作っており、これも美味しいそば湯でした。
「かしわ蕎麦」の麵は、しっかりとしたそば麵でした。結構めん汁の温度を上げてられますが、麵は柔らかすぎずに丁度良い硬さを保ったまま提供されます。これも、大変美味しいそばです。

最後にいただいた、「かしわ蕎麦」は温かい麵にした時に、この粗びきそばがどうなるのかを確認してみたかったからです。いし豆さんへは大勢でうかがったので、そばがきとせいろの後に、もう一杯を追加でお願いするタイミングを躊躇しました。今日は、粗びきそばを温かくしていただくとどうなるのかと、興味津々でお願いしてみました。

生粉打ちでこの細さのそばは、温かいそばにするとトロトロになり、あまり美味しくいただくことができません。そのために、少し太くすればと思いますが、麵が太くなってもあまり変わりません。これを丁度良い硬さで食べようとすると、最初の茹で時間で調整し6秒から10秒で茹でて水でしめて、再度温めて食します。それでも、最初は良いのですが、中盤あたりから「軟かかすぎに変身」するので、最後まで美味しくいただくのは至難の業です。
きむらさんで提供される、かしわ蕎麦は、最後まで美味しくいただくことができました。これは、外一にされているが故なのだと感じました。

その後に、色々なお話をさせていただきました。
小樽の町から少し外れた住宅街ですので、商売には向かない場所だと思いますが、地道に美味しいそばを提供するお店として、最近よく耳にするおそば屋さんです。
やはり、少しずつ美味しいそばを求めて、そばの産地、そばの農家さん、そばの挽き方、ブレンド方法等々を検討し変更してきた過程がよくわかりました。まだまだ、この先も進化するのではと思います。近いうちに、並んでも食べられないおそばになるのかもしれません。
お時間をとって下さり、ありがとうございました。





そばとわたし(10) そば打ち記録(66) そばの細さ 四つだしとストレス 水回し再考

そば打ちの実践中に気づいたことも、「そばとわたし」として保存していきます。
よって、そば打ち記録(66)はそばとわたし(10)との併設です。

2017年5月27日(土)
気温:18度
天候:雨

今日は、1.5kgにて友人に差し上げるための生粉打と、同様の目的で福島県山都地区宮古のそば店「大下さん」で分けていただいた、玄そばの全粒粉の60メッシュ篩のそば粉を湯ごねで打ち、最後は、上砂川生粉打そば打ち名人戦のそば粉に再々チャレンジです。

1回目
そば粉:札幌新川そばの会のそば粉(キタワセ)1.5kg
加水量:640ml
最初の加水で600ml加え、その後に20mlを2回に分けて加水。
水の量は問題ない。大変打ちやすい粉なので全く問題なく作業は進み、1.5kgはそば切りに変身でした。そばの厚さは1.4mmで目指した厚さになりました。

【そばの細さ】
札幌新川そばの会の皆さんは、もう少し細いそばを好みます。翁の高橋名人は二八そばで1.2mmが理想として、そのサイズのそばを提供しています。
私は、最近、生粉打そばを1.2mmで食すと、食感を感じにくいのではないかという考えになってきています。理由は、二八であれば1.2mmでもその噛み応えがありますし、そばののど越しもちょど良いと感じます。しかし、生粉打の1.2mmは、その噛み応えが足りないし、のど越しものどを通る際の刺激が物足りないのではないかと感じてきています。まだまだ、試行錯誤の段階ですが、他の方に差し上げるそばですので、あまり細すぎず生粉打の良さを知ってもらうためにも、1.4mm前後でチャレンジしました。超えても1.5位ですので問題は無いと。

2回目
そば粉:福島県喜多方市山都地区宮古のそば店「大下さん」で分けていただいた、玄そばの全粒粉の60メッシュ篩のそば粉

先日大下さんに訪問した際に、そば打ちを見せていただきました(別のブログにて報告済み)。湯ごねでないと、このそば粉はつながらないとおっしゃっていました。私自身は、前回訪問時に分けていただいたそば粉を、水でつなごうとチャレンジしましたが、うまく打つことができませんでした。やはり、湯を用いてそばのデンプンをアルファ化してつなぐ方法が、このそば粉には良いのだと思います。

【四つだしとストレス】
大下さんの教えの通りに、約50%の熱湯を加えて、種になる水を少しずつ加えて塊にし、まとめてそば球に。大下さんでは、これを5個くらいに分けて、1つずつを丸のしして、それを数枚重ねて切ります。
今日は、丸のしではなく江戸流で丸のし、四つだしと進めてみました。丸のしは問題ありませんが、四つだしを試みると、麵体に細かなひび割れが出てきます。これは、四つだしによる麵を伸ばす力が加わることで起こる現象です。四つだしはそこそこで止めて、そこからは普通にのして形を少し整えました。厚さ優先で形はどうでも良いと切りかえ、回しのしで引っ張らずに圧だけを少しずつかけてのしました。

出来上がったそばは、ボロボロに切れるそばではありませんが、四つだしで傷つけたところは切れやすいようです。大下さんで見せていただいたそばのように、しっかりつながったままのそばとはなりませんでした。やはり、圧のみで平らにしていく方法が、もっともストレスをかけずにのす方法だと、再認識しました。

3回目
そば粉:上砂川生粉打名人戦の練習粉1.5kg
加水量:870ml
数回チェレンジしましたが、またまたチャレンジです。
今日は、参謀にK先輩が隣で見てくださっています。最初に、粉を握り「これは、相当水が入るよ。」「ゆっくり水を加えていかないと、失敗する。」「札幌新川そばの会のそば粉のように水分量が高くないし、ドラムで挽いているかもしれないの、大変むつかしいよ。」ということで、そば打ち開始でした。

最初の加水は、700ml一気に加えて水回しです。2日目で100ml加え、まだまだ入るという先輩の助言により、20ml位ずつ数回加えました。ここまで、水を入れられたことが初めてでした。

【改めて、水回し再考】
これまでの失敗の時の水回しと今日の違いは、加水後に水を出すように圧を一切かけないということでした。圧をかけると粉に入った水が表面に出てきてテリが出てきます。これにより粉がまとまり易くなります。これにより時間を短縮して水回しができます。これを用いてはいけないのかもしれません。じっくりと、ゆっくりと水が粉に浸透するのを待つ。そのためには、加水直後のように相当長い時間をかけて、サラサラ状の粉の状態を維持したまま、水を加えて行く。そうしないと、水が回っていかないのかもしれません。そんな、思いに行きついた今日の水回しでした。

「こんなに、トロトロでよいのですか?」とK先輩に尋ねると、「あと、10ml水を加えても良かったかもしれない?!」とのことでした。5段用の生粉打ち粉もこんな粉のようだということでした。K先輩曰く「じっくり水回しをして、そこからは、細心の注意を払わないとそばが出来上がらない。」「少しでも、気を抜くとトロトロの麵体が仇となり、麵が切れたり、破れたり、できたと思ったら途端に麵をたたむ際に切れたり、打ち粉が足りないとくっついたりだ。」「こんな粉で、生粉打で練習していると、二八は楽になる。」とのことでした。K先輩、アドバイスありがとうございました。少しだけ、水回しの方法が見えてきたかもしれません。

2017年5月22日月曜日

そば紀行(24) いし豆 真狩村

2017年5月21日(日)北海道真狩村の「いし豆」さんへ伺いました。

今年、岩手県平泉の地水庵に伺った際にご紹介いただいたお店です。
大変混んでいる人気店です。1日40-50食で売り切れ閉店です。

”5/19(金)に発売される【ミシュランガイド北海道2017特別版】。書籍の発売に先行して5/15より掲載店が発表となりました(WEB限定)。『ビブグルマン』に掲載されているお店です。”

店主の石川様に事前に訪問を約束し、お店の終了後に伺いました。2時間ほど、色々とお話を伺うことができました。
いし豆さん、小樽のきむらさん、札幌の此花さん、これに平泉の地水庵さんが加わり、色々と研鑽されているのがよくわかりました。共同でソバの購入を行い、保存方法、製粉等を研究されています。

本日提供いただいたそばは、昨年のそば粉(黒松内落合さん栽培の奈川在来種)を脱酸素で2-4℃で保存した玄そばを、その日に用いる分だけを脱皮し、丸抜きを用いて、石臼手挽製粉と、電動石臼挽き製粉をブレンドして、十一で打ったそうです。つなぎに関しては、十一で入れた方が、生粉よりも食感が良くなるからとのことでした。
確かに、つながりや食感はよくなるのかもしれないと思います。

いただいた「もりそば」は、その食感、香り、甘みを感じる美味しいそばでした。やはり、粗引きと微粉配合がそばの香りと甘みを引き出すには必要なのだと再認識させられるそばでした。粗挽き粉のそばの香りと、微粉のそばの甘み、食感を引き出すためのつなぎの良いところをそれぞれ引き出しているのだと思います。これらの配合研究の成果がそばの美味しさを引き出していることを、地水庵さんのそば同様に感じさせるそばでした。

今日の経験で、改めて考えを巡らすと、次のような知見が得られるのではないかと思いました。
そばの香りと甘みがそばの美味しさだと思われている方は、次のようなそばを好む傾向があるのではないでしょうか。

  • 微粉引きのそば粉を用いて生粉打を行う。
  • この生粉打そばの香りと甘みを引き出すために、長茹でして甘みを引き出す。
  • そなために冷水絞めが必要になります。
  • これらは、すなわちそばの食感を捨てることになります。

この長茹でそばが美味しいという言う方がいます。比較駅年配の方に多いように思います。ここまで極端ではなくても、生粉打そばを好む方には、食感よりもそばの香りや甘み重視派が多いのではないかと思います。

一方でその全く反対で、そばの香りや甘みよりも、食感をより重視する方がいます。決してそばの香りや甘みを無視しているという訳ではありません。もし、そばの香りや甘みを全く捨てているのであれば、そばでなく他の麵で良いわけですので。どちらかというと食感重視という方は、次のような傾向があるのではないでしょうか。

  • のど越しを最重視する。
  • ツルっと感が大事なので、生粉打よりも二八そばを好む。
  • そばの香りや甘みは感じられれば良い。

この二八そばを好む方が、実は多いというが現状ではないかと思います。生粉打そばは、のど越しが物足りないと感じるわけです。比較的若い方に多いように思います。

この両方の方にアプローチして、美味しいそばを提供するには、製粉、配合が重要なポイントになるのではないかと思いました。

いし豆さんでは、そばの美味しさを左右するのは、やはりソバ自体が美味しいソバか否かによるという結論に至っているようです。ソバ農家さんが栽培する美味しいソバの持つ力を、いかに損なわないで保存し、製粉し、提供するかがそば店の役割かなというお話でした。ソバは引き算だよというお話は、なるほどと頷くお話です。

また、日本全国のお蕎麦屋さんにも大変多くの情報をお持ちで、大変勉強になりました。少しずつ美味しいそばを提供しようと頑張っているお蕎麦屋さんが増えているのだと実感します。日本特有のそば文化ですので、その文化を基礎にソバをより美味しい「食」へ導こうとするお蕎麦屋さんの頑張りに、大エールを送りたいです。しかし、これだけのそばを安価(もりそばは、他店の大盛りサイズで800円でした)で提供されています。これは、消費者にはありがたい話です。






2017年5月21日日曜日

そば打ち記録(65) 1.5kgそば打ち練習

5月連休後から、全麵協3段位試験の練習を開始です。
そば粉は、これまでに蓄えたそば粉を用いて、1.5kg生粉打で練習を始めました。

5月13日(土)
気温:14度
晴れ

<1回目>
札幌新川そばの会の昨年のそば粉1.5kg使用
加水率:720ml
少し硬めでしたが、ヒビは入らず無事に打ちあがる。少し、のしムラがありました。
加水が少しだけ足りないために、少し時間がかかりました。硬めの麵体は、地のし、四つだし、本のしと少しずつ時間が余計に必要になるという印象です。一方で、一つ一つの動作確認には、少し硬めの方が確認しやすと思います。一長一短です。

<2回目>
上砂川生粉打名人戦のそば粉1.5kg使用
加水量:840ml
最初の加水で700mlを入れて様子を見ました。その後100ml近く加えたところで丁度良いと思いくくりましたが、段々と麵体が絞まってきてひび割れてしまいます。
再度、麵体を崩して水を加えますが、時すでに遅しで全く水は入りません。この状態で、加水しズル玉状態のそばの塊にして、何とか丸出し、四つだしと進み、本のしに入りますが、麵体が緩いので湿気との戦いになります。最後は、のし過ぎも加わり麵体が破れてしまいました。
上砂川の生粉打名人戦の粉は、まだ、私の手に負えないようで、これで3週連続で打ちのめされています。難しいです。


5月20日(土)
気温:24度
晴れ

<1回目><2から3回目は打ち直し>
札幌新川そばの会の昨年の粉1.5kg(2・3回目は同じ粉の打ち直し)

最初の加水の段階で、早めに圧をかけて水を出すようにしてみました。すると、早めに水が引き出されますが、しっとり感ではなく、べっとりとした状態になります。余りに早い段階で圧を加えると、水が粉の1粒1粒に浸透する前に、水の回りに粉が付着してしまうような状態になって、粉の中にしみこむ前に水同士の張力でくっついてしまうような状態になるのだと思います。

やはり、早く圧を加えると水が回らない(浸透しない)ということを再確認しました。どの程度の時間と衝突の力を用いて、水を粉の分子にしみこませるかというのが水回しの効率ですが、今回の時間と衝突力では足りないということが確認できました。

2回目と3回目の打ち直しは、1回目の水回しの失敗がそのまま引き継がれ、いくら水を加えても、打てるようなそば粉の状態になりませんでした。上記に記載した、上砂川の生粉打名人戦のそば粉を打った時と同じ状態になります。
ということは、生粉打名人戦用の粉の水回しも、粉の中に水が浸透できていないということのようです。

もう一度水回し方法を再確認する必要があるという事を再認識したのが、この2週間の練習成果でした。