札幌そば研究センター

2016年3月6日日曜日

そば紀行(7) 並木藪蕎麦

老舗の並木藪蕎麦です。

 前日に、山形県鶴岡市の雪の中のニューウェーブそば店から、東京下町の超老舗の浅草の並木藪蕎麦に伺いました。そば粉十割で、卵つなぎで提供される蕎麦がどんなものなのか大変興味があります。また、3箸半でなくなる蕎麦の量と、辛いと言われるそば汁を経験してみたいとの思いで伺いました。

 浅草雷門前の並木藪蕎麦の前は、行列ができていました。こんなに混んでいるのですね。
中を覗くと、驚いたことに高校生の団体が7割ほどの席を占めています。修学旅行なのかなと思います。浅草ですので元々観光地で、加えて、東京スカイツリーにも近いですので、最近は浅草界隈が修学旅行コースになっているのかもしれません。

 数分待ち、席に着くと、私は席に着くなり、ざる蕎麦を頼みました。
私が通された席は相席で、隣の年輩の方は蕎麦前で焼き海苔、板わさ、天ぷらで一杯やっています。向かいの二人は、何やら怪しい男女で、想像するに地方から東京に旅行で来られたのだと思います。二人は、「東京の(江戸の)蕎麦は良いね、私たちには醤油が濃いという文化が無いからね。」と言う会話が勝手に私の耳に飛び込んできます。これが、東京の老舗蕎麦屋の風景なのですね。別のテーブル席では、高校生諸氏が大盛天ぷら蕎麦をほおばっています。こちらは、「この天ぷらエビが一杯だね。」と。
 
 前日の山形県月山の麓の蕎麦屋と、今目の前で展開されている蕎麦屋の状況の違いは、蕎麦屋では、その環境で大きな違いがあるなと思いめぐらせていました。すると、ざる蕎麦が運ばれてきました。
 この量が3箸半かと感心です。本当に少ないです。茹であがりで110から120g程度ではないかと思います。前日のそば店の3分の1程度の量です。麺は1.2mm~1.3mm程度にきれいに揃えられています。手で切った麺ではないことは明らかです。 相当以前より並木藪蕎麦では、十割そばで卵繋ぎで、手こね、機械のし、機会切りと、堀田平七郎さんの本に記載されています。



 汁は確かに辛いです。蕎麦下3cmに汁をつけてたぐると、最後に汁の辛さを感じます。辛いからこそ、汁を一杯つけられないので、そばの味と香りを感じた後に、汁の塩気と甘みを感じます。この蕎麦の味が先で汁を後から感じることで、蕎麦を感じるのでしょうね。江戸末期から、蕎麦の辛汁が辛い(濃い)理由は、蕎麦と汁を別々に感じさせ、最後に統合させる食べさせ方として開発されたものなのでしょう。確かに汁は辛いけど、美味しいそば汁でした。そば湯で割ると、その辛さが強いことを一層感じました。

 私が現在作っている辛汁は、この並木藪蕎麦の辛汁と、室町砂場の辛汁、有楽町更科の辛汁、大西さんの辛汁、かないまるさんの辛汁のかえしの配分と、だしの成分を基に、色々試しながら現在二つの辛汁が出来上がっています。切れの良い辛汁と、旨みが高い辛汁の二種類です。どちらも美味しくなりました。この二つの辛汁を使って、産地が異なソバにどちらの辛汁が合うのかを検討しているところです。まだまだ、結論が出ません。様々な産地のソバを使って研究し、色々なお店に伺いながら辛汁と蕎麦の相性を経験しながら研究していけば良いと考えています。そのうちにこれというのが見つかるかもしれません。

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