札幌そば研究センター

2015年12月6日日曜日

そば紀行(2) 山形県 大石田そば街道

山形県大石田町にそばの旅です。
大石田町は、最上川の船着き場として栄えた町で、最上川の川べりには白壁を描いた防波堤があったり、文豪が良く訪れた町として、松尾芭蕉、斎藤茂吉などが紹介されていました。隣町に尾花沢市がありますが、JRの駅は大石田だけなので、尾花沢市や市内の銀山温泉へ行くにはここで降りるのだそうです。
大石田町は玄そばの産地として知られており、生産量は山形県内でもトップクラス。夏と冬、昼と夜の寒暖の差が大きく、デンプンの蓄積を多い、豊かな風味を生むそばになるといわれています。近年は、町おこしも含めて、そばの里づくりに力を入れており、平成13年には環境省「かおり風景100選」に「大石田町そばの里」が選ばれているそうです。
大石田そば街道は3つの地区(次年子地区、大石田地区、来迎寺地区)からなっているようです。在来種としては、来迎寺種が有名で、別に次年子の在来種があるようです。来迎寺種のそば粉を扱っているのが、大石田と来迎寺地区で、次年子は大石田地区から車で20分ほどの集落でのそば種です。異なるそば在来種なので、次年子在来種と来迎寺在来種を試そうと、訪問前に下準備をして、お店を選択していました。大石田町のホームページからアクセスした大石田そば街道パンフレットの事前情報では、大石田そば街道で、生粉打ちそばを提供するのは、「きよそば」と「ふうりゅう」という2店舗のみでした。この情報を基に、大石田町に問い合わせたところ、この2店舗は、来迎寺在来種のそばを扱う店で、次年子は扱っていないという情報でした。次年子を扱う店では、生粉打ちは無いようです。次年子そばの栽培から、製粉、そば打ちまでやっている店が、次年子そばを広めようと活躍されてきた、「手打ち次年子そば」というお店ですので、次年子そばで伺うお店には、ここを選択です。実際に行ってみて、これらの事前情報は、ほぼ正しかったです。「手打ち次年子そば」は、十一でした。また、来迎寺種の生粉打ちそばを提供する店が、もう一店舗できたそうで、「そば屋 昇」という店です。今回は未訪問でした。

大石田駅に着き最初に向かったのが、次年子の「手打ち次年子そば」でした。駅からタクシーに乗り、次年子地区を目指しました。往きながら、タクシーの運転手の方から、「そば屋 昇」の情報を得た次第です。車で20分超走ると、山の中腹にお店が現われました。雪交じりのなか、私と運転手さん二人で店の中へ駆け込み、そばをオーダーです。どちらにしても、また、大石田に戻るので、改めて車を呼ぶより、運転手さんに待ってもらうことにし、ついでに、一緒にそばをいただくことになりました。
二人とも、もりそばをお願いしました。このお店で扱うそば種は、やはり次年子在来種を用いていて、自ら栽培し、提供しているそうです。つなぎを入れ十一で提供しているというのは、お店の方に伺いました。雪交じりの日ですので、お客さんは我々二人だけです。
最初に、漬物と山菜のお浸しが出され、これが大変美味しい漬物でした。漬物をつまみながら、運転手さんから大石田のそばや、町の情報を教えていただき、そばが来るのを気長に待つこと、15分くらいでしょうか?そばが目の前に現われました。そばの太さが1.8~2.2mmの 太麺で、玄蕎麦を一緒に挽いた粉も含んでいるのかなと、そばを拝見して思いました。少し、グレーかかったそばの色でした。まずは、そばだけいただきました。そばの香りはありますが味は思ったほど強くありません。つなぎが入るので、そばはつなぎ独特の、「ツルツル」感が前面に出て、そばの味もつなぎが邪魔をしているように感じました。また、見た目とは異なり柔らかいそばです。筏もあり、端のそばもありと、色とりどりのそばを堪能です。つゆは、 薄口醤油使用して(確証はありませんが、つゆの色合いは薄いのでたぶんそうだと思います)、だしは魚の薫りが強く、甘みと辛みは普通の濃さです。そばの量は、多いので、朝食を抜いてきたのですが、結構溜まります。
次年子在来種のそば本来の香りと味を確かめたいので、そば粉を分けていただけないかお願いすると、快くご了解いただきました。一度、生粉打ちで試してみます。

もりそばに付く山菜&漬物
次年子在来種の十一もりそば


次に向かったのは、来迎寺地区の来迎寺在来種を自家製粉し、生粉打ちしている「きよそば」さんです。こちらは、広い店内がほぼ満席で、相席でお願いしました。
「もりそば」というメニューはなく、「板そば」とあります。これが「もり」に該当するそうです。四角い木の皿に、直接そばが載っている山形県特有の「板そば」です。こちらのお店も、待つ間に、漬物が出されます。今回は、きくらげの漬物が珍しいなと賞味しました。そばが出るまでに、30分くらいかかりました。お店が混んでいるのもあります。店では、見えるところに窯があり、打ち台はその奥になります。見ると、奥の木鉢でそばを捏ねているので、追い打ちしながらなのだと思いました。「きよそば」でも、来迎寺在来種のそば粉を手に入れたかったので、恐る恐る、そば粉を頂けないか伺うと、同様に、快く分けていただくことができました。これで、同一地区で2種類の在来種そば粉を手に入れ、今回のそば紀行の目的をほぼ達成です。
そうこうしていると、板そばが来ました。そばの太さは、1.5~1.7mm の太麺のそばです。まずは、そのまま頂戴すると、そばの香りと味を感じるそばで、ほんの少しだけ柔らかいと感じます。しかし、つなぎのツルット感は無いので、違和感はありません。少しだけ噛みながらいただく、田舎そばという範疇に入るそばなのだと思います。玄蕎麦は入れずに丸抜きからの製粉で、ある程度目の細かなメッシュで篩ったそば粉で打っていると思います。そばの表情には、ざらざら感がなく、生粉打ちですが喉越しで引っかかりが少なく、麺は太めのそばなので、噛むのか呑むのか迷う複雑なそばだなと思いました。板で出来た箱に、そばがそのまま入っているので、水切れが良くない状態が最後まで続きます。反対に、最後まで水が纏わるそばがいただけます。
少し太い田舎蕎麦ですが、生粉打ち出来るように細かな粉を選んで打っていると思います。そのために、田舎蕎麦に良くみられる、丸抜きの挽きぐるみや、玄蕎麦入りではない、洗練されたそば粉での太麺のそばという印象でした。
つゆは、カツオとその他の魚の匂いが強いつゆです。甘みと辛味とを抑えぎみにしているので、特に魚を強く感じました。また、つゆの色は薄い色ですので、こちらのお店も、薄口醤油を多少使用しているのではないかと思います。

そばと漬物
そば全景

この店からの帰りに、運転手さんに教えてもらっていた、団子の名店があるということなので、これを逃す手はないと、雪交じりの雨の中を一路団子屋へ向かいました。「最上川千本だんご」という横丁豆腐店が提供する団子です。飯米を2度つきした団子で、勿論保存剤などは一切使用していない団子で、当日中に食べないと硬くなるそうです。餡、くるみ、ずんだ、栗などに加えて、だだちゃ豆もあります。だだちゃ豆は、山形県庄内地方鶴岡市の特産品で、本当に濃い味で、美味です。だだちゃ豆のずんだと、普通のずんだとをお願いし、これに、栗入りあんとクルミもお土産にしました。このお店では、10周年記念だそうで、今週末にそのお祭りをするそうです。その記念にと、みたらしだんごを2本も頂戴しました。そうだ、「くじらもち」も頂戴しました。感謝、感謝です。
最上川千本だんご(くるみ、栗入りあん)
だだちゃ豆ずんだ&ずんだ

駅に戻り、駅前に「ぱんどら」という和洋菓子店があります。このお店も事前情報では、美味しいお菓子があるということなので、寄ってみました。「あわゆき」というお菓子で、あん、ずんだ、くりとあるそうですが、通常は冷凍品を販売しているが、生でアンだけ有るとのことです。他の味は、冷凍になっているので、帰宅するころには解凍され食べごろとのお話です。生の物を試してみたいので、生の「あわゆき(アン)」を3個だけ購入です。これは、まだ、いただいていません。

最後に、時間を少し残すことができたので、駅隣の「ふうりゅう」に入りました。ここでは、製粉は外部委託で、2番粉のみを使用しているそうです。こちらも、もりそばはなく、板そばです。板そばだけでは寂しくなってきたので、「イカげそ天ぷら」付でお願いしました。よくよく考えると3枚目にイカげそ天なので、多いなと思いながらも、目が欲していたようです。
「きよそば」と同じ来迎寺在来種で、自家製粉のそば粉と製粉会社のそば粉の両方が手に入ると面白いなと思い、こちらのお店でも粉をお願いし、分けてもらいました。これで、3店舗2種3様の3kgのそば粉を担いで、団子4本+2本と、3個のお菓子を持って帰ることになったのです。
こちらでは、漬物が最初に出されませんでした。そばと一緒に少しついてきただけです。その代りに、そばを待つ間には、揚げそばが供されました。塩味の揚げそばも美味しかったです。出された板そばは、前のきよそばさん同様に1.5~1.8mmの太麺でした。そばの香りと味は、「きよそば」のそばとほぼ同様のそばです。しかし、茹では、少し硬めで提供しています。また、板の上に直接そばを置くのではなく、すのこがあるので水切れが良いそばです。2番粉のそばは、ザラッと感は少なく、もっちりスッキリという感じのそばです。
つゆは、癖がなく、だしと辛味と甘みの全体を少し抑えているものでした。色は薄いので薄口醤油を使用しているのか?と思わせるつゆでしたが、確認していないので、本当のことは不明です。だしは、他の2店舗ほど魚の薫りを感じませんが、だしの強いつゆであることには変わりがありませんでした。
来迎寺2番粉板そばとげそ天
同 そばアップ

大石田そば街道の3店舗で感じたのは、山形市内のそば屋さんで出される板そばの田舎蕎麦に、一番近いのが、次年子でのそばでした。来迎寺の生粉打ち2店舗は、丸抜き2番粉あたりのそば粉を用いて、これまでの田舎蕎麦ではない食感を提供しながら、田舎蕎麦なんだと主張するそばのように感じました。加えて、つゆは、江戸そばの甘く辛く濃いそばつゆではなく、甘みと辛みを抑え、色を薄くして、だしを強くして味を補うという(失敗すると魚臭くなりますが)、こちらも最近のそばのウェーヴに乗るよなつゆでした。
美味しいおそばに、お腹はパンパンです。盛が良いです!!団子は無理かな?でも、団子は今日中なんです。明日には硬くて食べられないとお店の方が言われてました。

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